【治療は?予防は?】帯状疱疹について【皮膚科専門医が解説】

目次

はじめに: 帯状疱疹とは

帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus: VZV)による感染症です。

小児期に水痘にかかると、治癒した後も水痘・帯状疱疹ウイルスは体内から消滅することなく、神経節の中に潜伏します。

その後、疲労やストレス、免疫力の低下などをきっかけに、再活性化したウイルスが神経から皮膚に至って増殖すると、帯状疱疹を発症します。

このように、体内に潜んでいるウイルスの再活性化による発症様式のことを「回帰感染かいきかんせん」と称します。

帯状疱疹の症状

帯状疱疹は通常、皮膚の症状(皮疹)が出現する1日〜数日前に、痛みやピリピリとした違和感、感覚障害などの神経に関わる症状から始まります。

今まで外来で帯状疱疹と診断した方からは、「腰の痛みがあり整形外科で湿布をもらったが、その後から皮膚に水ぶくれが出てきた」「頭痛で脳神経外科を受診し、CTで異常なしと言われたが、その後赤いぶつぶつが頭皮に出現した」などといったエピソードがよく聞かれました。

とはいえ、当然ながら腰痛や頭痛がすべて帯状疱疹の前触れという訳ではありませんので、皮疹が出現した段階で、「この痛みは帯状疱疹だったのか」と気づくことになります。

ウイルスによる炎症が神経に沿って皮膚に広がるため、皮膚の症状も帯状・片側性にあらわれる(※)ことが特徴であり、膨らんだような赤みから、徐々に水ぶくれに変化します。

水ぶくれはその後に破けてただれたり、膿んだりしますが、1週間ほどかけて徐々に乾燥し、かさぶたとなって治癒します。

(※皮疹が複数箇所にあらわれる複発性帯状疱疹、全身性に散在する汎発性帯状疱疹もまれにみられます。)

帯状疱疹の診断

帯状疱疹は、その特徴的な経過と皮疹の分布から、通常は視診(見た目)で診断が可能ですが、発症の初期では、赤みや水ぶくれがごくわずかで、虫刺されやあせも、接触皮膚炎(かぶれ)などとの鑑別が難しい場合があります。

以前は水ぶくれを採取し、顕微鏡でウイルスが感染している細胞を確認する「Tzanck(ツァンク)試験」が広く行われていましたが、現在では2017年に保険適用となった迅速検査キットを用いることで、検査結果が陽性であれば帯状疱疹であると確実に診断できるようになっています(3割負担で1150円程度(※))。

※2023年5月現在

帯状疱疹の合併症

帯状疱疹は発症する部位によって様々な合併症を生じることがあります。

例えば顔面の帯状疱疹では眼に症状が及んだ場合、角膜炎やぶどう膜炎に注意が必要です。

また、外耳道や耳介に皮疹を生じている場合は、顔面神経麻痺や耳鳴り、難聴をきたすRamsey-Hunt症候群を発症することがあります。

そのほか、中枢神経の合併症として脳炎や髄膜炎、末梢感覚の合併症として膀胱・直腸障害などが挙げられます。

これらの症状を認めた場合は、速やかに入院の上、点滴での抗ウイルス薬治療を検討します。

帯状疱疹の治療

①抗ウイルス薬

帯状疱疹の治療は、第一に抗ウイルス薬の内服です。

現在帯状疱疹に対して使用できる内服薬は

■「バルトレックス®(一般名: バラシクロビル)」

■「ファムビル®(一般名: ファムシクロビル)」

■「アメナリーフ®(一般名: アメナメビル)」

などがあります。

このうち、バルトレックス®とファムビル®は腎機能に応じて用量調整が必要です。

また、これらの薬剤の中で小児に適応があるのはバルトレックス®のみとなっています。

合併症を生じている場合や、複発性・汎発性帯状疱疹では、入院の上、抗ウイルス薬の点滴治療を行うこともあります。

内服・点滴ともに、症状の進行を抑制するため、なるべく早期に治療を開始することが望まれます。

②痛みに対する薬

帯状疱疹では、抗ウイルス薬と同時に、痛みを抑える治療も行います。

痛みの程度は人によって異なるため、症状に応じて増量・複数の薬剤の併用なども検討します。

帯状疱疹後神経痛について

帯状疱疹の後遺症としてもっとも頻度が高いものは、ウイルスの再活性化によって生じた神経のダメージが残存することによる疼痛、すなわち帯状疱疹後神経痛(post-herpatic neuralgia: PHN)で、通常の怪我などの痛みとは異なり「締め付けるような」「焼けるような」と表現される痛みが特徴とされています。

また、「服が擦れるだけで痛い」「風が吹くだけで痛い」など、ごく軽い刺激でも痛みを訴える方がおられ、このタイプの痛みは「アロディニア」と呼ばれています。

帯状疱疹後神経痛の発症リスクとして、50歳以上であること、帯状疱疹の症状が重度であることの他、顔面に生じた帯状疱疹や、治療開始が遅れた場合などが挙げられます。

帯状疱疹後神経痛に対しては、発症早期とは異なり、リリカ®(一般名: プレガバリン)やタリージェ®(一般名: ミロガバリンベシル酸塩)、トラムセット®(トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤)といった、神経痛により特化した内服薬を用いて治療を行います。

最近では、発症早期の痛みと、帯状疱疹後神経痛を合わせて、帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain: ZAP)と称することもあります。

帯状疱疹は人にうつる?

前述のように、帯状疱疹は自らの体内に潜伏している水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症であり、帯状疱疹として他人からうつったり、人にうつすことはありません。

ただし、水痘にかかったことのない乳児には、主に接触によってウイルスが感染し、水痘として発症することがあります。

また、免疫を持たない成人でも水痘を発症することがあり、特に妊婦は水痘にかかった場合重症化するリスクが高いこと、また胎児にも影響が出る場合があることから、帯状疱疹を発症した方は特に乳児や妊婦との接触は避けるべきと考えられています。

帯状疱疹は再発する?

一度帯状疱疹にかかると、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力が高まるため、1年以内に再発することは稀であるとされています。

しかしながらウイルスはその後も体内に潜伏しており、中には2回以上発症する方もおられます。

この場合、初回と同様に抗ウイルス薬と痛み止めを中心とした治療を行います。

帯状疱疹の予防

現時点で、帯状疱疹の発症を完全に予防する方法はありませんが、水痘・帯状疱疹ウイルスに対するワクチンを接種することで免疫力を高め、「かかりにくい」「重症化しにくい」状態とすることが可能です。

国内では50歳以上の方が対象となっています。

「ビケン®」「シングリックス®」の2種類のワクチンがあり、発症予防率や接種回数・方法などに違いがあります。

詳細は以下の記事もご参照ください。

最後に

帯状疱疹の症状や治療を中心に解説しました。

帯状疱疹は診断・治療が遅れると帯状疱疹後神経痛の発症リスクが高まるとされているため、疑わしい場合は早めに皮膚科を受診することをお勧めします。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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