【妊娠中のかゆみ】妊娠性痒疹、多形妊娠疹について【皮膚科専門医が解説】

目次

はじめに

当院は開院以来、老若男女問わず多くの方に受診していただいていますが、最近では妊娠中・授乳中の皮膚トラブルのご相談も増えてきています。

そこで今回は、妊娠中に出現する「かゆみ」の代表例である、妊娠性痒疹ようしん、多形妊娠疹について解説します。

症状

①妊娠性痒疹

妊娠性痒疹とは、多くは2回目以降の妊娠初期(3〜4ヶ月)に発症する強いかゆみを伴う発疹であり、主に四肢(腕や足)の伸側や体幹(お腹や胸、背中など)に生じます。

出産後には症状の改善がみられますが、妊娠するたびに発症する傾向があります。

②多形妊娠疹

多形妊娠疹とは、英語ではpruritic urticarial papules and plaques of pregnancy(PUPPP)とも呼ばれ、妊娠中に生じるかゆみという点では妊娠性痒疹と同様ですが、初回の妊娠、特に双胎(双子の妊娠時)で生じやすいとされている点、妊娠後期にかゆみを伴う赤みやぶつぶつが妊娠線周辺に生じ、徐々に四肢や体幹に広がっていく点などの違いがあります。

また、どちらの症状も、胎児に対する影響はないと考えられています。

妊娠性痒疹多形妊娠疹(PUPPP)
2回目以降の妊娠
妊娠初期
四肢・体幹に発症
初回妊娠
妊娠後期
妊娠線周囲から徐々に広がる
妊娠性痒疹と多形妊娠疹のまとめ

原因

妊娠性痒疹、多形妊娠疹ともに、はっきりとした原因はわかっていません。

妊娠に伴う免疫システムの変化や、特に多形妊娠疹では妊娠線周囲に症状が出現することから、体型の変化に伴い皮下組織がダメージを受け、炎症反応が生じている可能性などが指摘されています。

治療

妊娠性痒疹、多形妊娠疹は、いずれも出産後一定の期間を経て改善することから、治療せずに経過をみることも可能ですが、かゆみが強く日常生活に支障をきたす場合には、症状のコントロールを目的に以下の治療を行います。

①ステロイド外用薬

かゆみに対して、一般的にはストロングクラス以上の外用薬(塗り薬)を、1日2回使用します。

ステロイド外用薬のクラス分け(ランク、強さ)については、以下の記事もご覧ください。

当院では副作用にも留意しつつ、症状・部位に応じた適切なランクの薬剤を使用することに努めています。

また、皮膚の乾燥により症状が悪化していると推察される場合は、保湿剤などの外用薬を併用することもあります。

②抗ヒスタミン薬

かゆみが強い場合は、上記のような外用薬に加えて、抗ヒスタミン薬の内服薬(飲み薬)を使用することがあります。

当院では、ロラタジン(クラリチン®)やセチリジン(ジルテック®)をはじめとする、妊娠中の女性に対する使用経験が比較的多く、安全とされている薬剤を選択し、その後も症状に応じて内服の中止・継続を判断しています。

最後に

妊娠性痒疹、多形妊娠疹の症状や治療について解説しました。

「妊娠中だから薬が使えない」ということはありませんので、辛いかゆみでお困りの際にはぜひ一度ご相談ください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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