AAD(米国皮膚科学会)のニキビ治療・最新ガイドラインについて【皮膚科専門医が解説】

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はじめに: 米国と日本のニキビ治療の違い

ニキビは洋の東西を問わず、多くの人を悩ませる皮膚トラブルの1つですが、米国と日本でのニキビ治療の主な違いとして、①米国では保険診療で使用されている薬剤(成分)の一部が、日本では保険適用外である点、そして②米国では薬局でも効果の高いニキビ治療薬が購入可能な点が挙げられます。

①については、2015年に日本でも過酸化ベンゾイルという成分がニキビ治療薬として保険適用になっており(海外では50年以上前から使用されていました)、今後も徐々に保険適用の薬剤が増えてくることが期待されます。

②に関しては、病院を受診せずに薬が手に入ることは大変便利である一方で、薬剤による副作用を生じた際のサポート体制に懸念があり、一長一短といったところでしょうか。

2024年1月に、米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology: AAD)から最新のニキビ治療ガイドライン(Guidelines of care for the management of acne vulgaris)が発表され、一通り目を通しましたので、主に外用薬(塗り薬)と内服薬(飲み薬)について、日米の違いも含め解説します。

外用薬(塗り薬)

レチノイド

レチノイドはビタミンA誘導体の一種であり、面皰(毛穴の詰まり/白ニキビ)改善や抗炎症作用、色素異常を改善させる作用などを有することから、米国のガイドラインにおいては日本と同様、ニキビ治療薬として強く(strongly)推奨されています。

米国ではトレチノイン、アダパレン、タザロテン、トリファロテンの4種類のレチノイドが使用可能ですが、日本ではアダパレン(ディフェリン®ゲル)が唯一保険適用の薬剤となっています。

主な副作用として肌の刺激感、ひりつき、赤み、皮むけ、痛みなどがあり、強い副作用を認めた場合は使用の中止を検討します。米国のデータでは、使用開始12週間の時点で、副作用による中止の割合は1.4%とのことでした。

過酸化ベンゾイル

過酸化ベンゾイルは活性酸素の産生を通じて抗菌作用や面皰改善作用を示す薬剤です。米国、日本ともにニキビ治療薬として強く(strongly)推奨されています。日本ではベピオ®ゲル、ベピオ®ローションの名称で保険適用となっています。

主な副作用として肌の刺激感、ひりつき、赤み、乾燥、皮むけ、痛みや、稀にかぶれ(接触皮膚炎)の症状がみられることがあります。

また、日本ではレチノイド(アダパレン)と過酸化ベンゾイルが両方配合されたエピデュオ®ゲルという製剤もニキビに対して使用可能です。

抗菌薬

日本では主にクリンダマイシン、ナジフロキサシン、オゼノキサシンといった抗菌薬(抗生物質)が赤ニキビや黄ニキビといった強い炎症を伴う症状に用いられることが多い一方、米国ではクリンダマイシンに加えてエリスロマイシンやミノサイクリンといった異なるタイプの外用薬(塗り薬)が使用されています。

耐性菌の観点から、抗菌薬のみでの治療は米国のガイドラインでは推奨されておらず、過酸化ベンゾイルとの併用によって治療効果が上昇するといった報告もあります。

日本ではクリンダマイシンと過酸化ベンゾイルが配合されたデュアック®という製剤が使用可能ですが、日本のガイドラインではニキビの炎症が落ち着いた後に長期間使用することは推奨されておらず注意が必要です。

その他

米国のガイドラインではニキビ治療に有用な外用薬(塗り薬)として上記の他にサリチル酸やアゼライン酸などが言及されています。残念ながら日本では保険適用ではありませんが、当院ではアゼライン酸を高濃度配合した製品を購入可能となっておりますので、保険適用の成分がお肌に合わない方や、効果を感じられない方は、一度ご相談ください。

内服薬(飲み薬)

抗菌薬

抗菌薬(抗生物質)の内服薬(飲み薬)は主に中等度から重度のニキビに使用され、米国でも日本と同様、ミノサイクリンやドキシサイクリンといった「テトラサイクリン系」に属する抗菌薬が主流です。

しかしながら、耐性菌の出現や、抗菌薬関連の副作用を予防するため、これらの薬剤の使用を必要最低限に留めることは、米国、日本とも共通の認識となっています。

イソトレチノイン

イソトレチノインは米国では難治性のニキビに対して1980年代より保険適用となっており、皮脂腺の縮小作用、角化の正常化、抗炎症作用などを通じてニキビ菌の増殖を抑える効果が示されています。

イソトレチノインの使用中は肝機能や脂質(コレステロール)の検査が必要となること、妊娠中は使用できないことに注意が必要ですが、他のニキビ治療で治らない、繰り返すニキビに対しては良い適応といえます。

イソトレチノインの主な副作用として、皮膚の乾燥や皮むけ、頭痛、骨の痛み、気分の変調などが挙げられていますが、これらは内服の中止により改善します。

日本では保険適用はなく、使用する場合は自費診療となります。

その他

米国のガイドラインでは上記の他にホルモン製剤(経口避妊薬/ピル、スピロノラクトン)が紹介されていますが、日本ではニキビに対しては保険適用外となっています。

最後に

今回は米国の治療ガイドラインについて、日本との比較も交えて解説しました。

当院では皮膚科専門医が1人1人のお肌の状態を見極め、保険診療を中心に適切な治療のご提案ができるよう努めてまいります。

ニキビでお困りの方はぜひ一度ご相談ください。

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