アトピー性皮膚炎の新規治療薬: 外用薬(塗り薬)編【プロトピック®/コレクチム®/モイゼルト®】

目次

はじめに

ステロイドに次ぐ「第2の外用薬」として1999年に発売されたプロトピック®軟膏を皮切りに、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢は近年ますます増えてきています。

今回はプロトピック®軟膏の他、2020年に発売されたコレクチム®軟膏、そして2022年に発売されたモイゼルト®軟膏の3種類の塗り薬について解説します。

①プロトピック®軟膏

(1)プロトピック®軟膏とは

プロトピック®軟膏(一般名: タクロリムス)は、免疫抑制薬であるタクロリムスの塗り薬です。

タクロリムスは免疫関連細胞(Tリンパ球)の活性化に関わるカルシニューリンという物質の働きをブロックすることにより、炎症を抑制する効果があります。

タクロリムスの飲み薬や注射薬は以前から存在しており、骨髄移植の拒絶反応を抑える目的などで使用されてきました。

塗り薬は日本で開発され、1999年に「プロトピック®軟膏0.1%」が、2003年には「プロトピック®軟膏0.03%」が発売されました。

0.1%製剤は16歳以上、0.03%製剤は2歳以上で使用可能です。

2歳未満の小児には現在適応がありません。

ステロイドの塗り薬と異なり長期使用による毛細血管拡張や皮膚の菲薄化(薄くなる)などの副作用がほとんどないことから、慢性的に湿疹を繰り返すアトピー性皮膚炎の方に適した薬剤といえます。

また、成分の分子量が大きいため、正常な皮膚からは吸収されない点もメリットです。

炎症を抑える強さは、ステロイドの塗り薬と比較すると0.1%製剤がおおよそストロングクラス、0.03%製剤がミディアムクラスの塗り薬と同等と考えられています。

ステロイドのランクに関しては以下の記事もご覧ください。

(2)プロトピック®軟膏の刺激について

当院でもプロトピック®軟膏をはじめて処方する際には患者さんにご説明していますが、使用開始から1週間程度、塗った部位にひりつきやほてりなどの刺激、かゆみを感じることがあります。

これはプロトピック®軟膏が皮膚の知覚神経に働きかけることで、刺激やかゆみを生じる物質が放出されることによるものと考えられています。

使用を続けるうちにそれらの物質は放出されなくなり、刺激やかゆみも改善しますが、中には最初の症状が強く出てしまい継続して塗ること自体が難しいとおっしゃる方もおられますので、お薬が合わないと感じたら遠慮なくご相談ください。

②コレクチム®軟膏

コレクチム®軟膏(一般名: デルゴシチニブ)はJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬の塗り薬です。

体内で免疫や炎症などのシグナル伝達に関わるJAK経路をブロックすることで、アトピー性皮膚炎の症状改善に効果を発揮します。

なお、JAK阻害薬の飲み薬は以前から関節リウマチや潰瘍性大腸炎の治療薬として使われていましたが、最近アトピー性皮膚炎にも使用できるようになっています。

コレクチム®軟膏は2000年に「コレクチム®軟膏0.5%」が、2021年に「コレクチム®軟膏0.25%」が発売されました。

0.5%製剤は16歳以上、0.25%製剤は2歳以上で生後6ヶ月以上の小児で使用可能です。

ただし、症状に応じて小児でも0.5%製剤を使用することができます。

追記: 2023年1月より、生後6ヶ月以降の小児でコレクチム軟膏0.25%が使用可能になりました。

③モイゼルト®軟膏

モイゼルト®軟膏(一般名: ジファミラスト)は2023年時点でもっとも新しいアトピー性皮膚炎の塗り薬です。

PDE4阻害薬という種類の薬剤であり、PDE4(ホスホジエステラーゼ4)という酵素の働きをブロックすることで炎症を抑制する効果があります。

同じ作用の飲み薬もあり、乾癬という別の皮膚疾患に使用可能です。

2022年に「モイゼルト®軟膏1%」および「モイゼルト®軟膏0.3%」が同時に発売されました。

1%製剤は16歳以上で、0.3%製剤は2歳以上で使用可能です。

コレクチム®軟膏と同様、症状に応じて2歳以上の小児でも1%製剤を使用することができます。

なお、「妊婦または妊娠している可能性のある女性」には投与しないことが望ましいとされています。

アトピー性皮膚炎の外用薬のまとめ

以上の3つの塗り薬について表にまとめました。

薬価も記載していますので参考にしてください(2023年1月時点: プロトピック®軟膏とコレクチム®軟膏は5gチューブ、モイゼルト®軟膏は10g チューブで計算)。

スクロールできます
プロトピック®軟膏コレクチム®軟膏モイゼルト®軟膏
一般名タクロリムスデルゴシチニブジファミラスト
作用カルシニューリン阻害薬JAK阻害薬PDE4阻害薬
適応年齢0.1%: 16歳以上
0.03%: 2歳以上
0.5%: 16歳以上
0.25%: 6ヶ月以上
1%: 16歳以上
0.3%: 2歳以上
使用方法1日1〜2回
適量塗布
1日2回
適量塗布
1日2回
適量塗布
薬価
(3割負担)*
0.1%: 約123円
0.03%: 約135円
0.5%: 約217円
0.25%: 約209円
1%: 約450円
0.3%: 426円
注意点刺激、ほてり、かゆみ妊婦×
各薬剤の比較

最後に: 薬剤の選択について

アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚の状態は千差万別であり、一概に「この塗り薬が良い」ということは言えません。

当院では大学病院のアトピー性皮膚炎専門外来や総合病院・クリニックでの診療経験を活かし、適切な治療法のご提案ができるよう努めてまいります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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