アトピー性皮膚炎の新規治療薬: 内服薬(飲み薬)編【リンヴォック®/オルミエント®/サイバインコ®】

目次

JAK阻害薬とは

今回はアトピー性皮膚炎の新しい飲み薬であるJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬について解説します。

JAK阻害薬は体内で免疫や炎症などのシグナル伝達に関わるJAK経路をブロックすることで、炎症反応を抑え、様々な疾患に対して効果を発揮します。

皮膚科領域以外では関節リウマチや潰瘍性大腸炎の治療でも使われています。

アトピー性皮膚炎の方を対象に2021年よりリンヴォック®が使用可能になり、さらに同じJAK阻害薬であるオルミエント®、サイバインコ®も発売されました。

なお、JAK阻害薬の塗り薬であるコレクチム®軟膏は、これらの飲み薬に先駆けて2020年よりアトピー性皮膚炎の治療に使用できるようになっています。

JAK阻害薬を使える方、使えない方

JAK阻害薬はアトピー性皮膚炎に対して高い効果が期待できるものの、現時点では内服に際し以下のような条件があります。

①アトピー性皮膚炎の確定診断がなされていること。

②直近の6か月以上外用薬(塗り薬)による適切な治療を行なっても十分な治療効果が得られず、以下のいずれにも該当する状態であること。

・IGAスコア 3以上

・EASIスコア 16以上、または顔面の広範囲に強い炎症を伴う皮疹を有する場合

(目安として頭頸部の EASIスコアが 2.4 以上)

・体表面積に占めるアトピー性皮膚炎病変の割合 10%以上

(日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬の使用ガイダンスより)

IGAスコア、EASIスコアはともにアトピー性皮膚炎の重症度を示し、IGAスコア3、EASIスコア16はおおむね中等症に該当します。

すなわち、アトピー性皮膚炎ではない方、直近6か月間に塗り薬による適切な治療を行なっていない方、軽症の方などはJAK阻害薬を内服することができません。

また、JAK阻害薬は共通して、以下の条件に当てはまる方は内服できません(禁忌)。

・薬剤の成分に過敏症のある方

・重篤な感染症(敗血症等)

・活動性結核

・好中球数が少ない(オルミエント®: 500/mm3未満、リンヴォック®、サイバインコ®: 1,000/mm3未満)

・リンパ球数が少ない(500/mm3未満)

・ヘモグロビン値が低い(8g/dL未満)

・妊婦または妊娠している可能性のある女性

上記に加えて、リンヴォック®では重度の肝機能障害で、オルミエントは重度の腎機能障害で、サイバインコ®は重度の肝機能障害や血小板数低値(50,000/mm3未満)で禁忌となっています。

また、JAK阻害薬を使用する前には必ずレントゲンもしくはCT検査で結核がないか、また血液検査でB型・C型肝炎のウイルスが体内にいないかなどを確認する必要があります。

さらに使用中も定期的な血液検査を行い、新たに副作用が出現しないか慎重に経過をみていくことが求められています。

次に、それぞれの薬剤についてみていきましょう。

リンヴォック®

リンヴォック®(一般名: ウパダシチニブ)は、元々は関節リウマチの治療に使用されていた飲み薬ですが、2021年にアトピー性皮膚炎に対して適応追加となりました。

16歳以上で1日1回15mgの内服、もしくは状態に応じて1日1回30mgの内服が可能です。

12歳以上かつ体重30kg以上の小児では、1日1回15mgの内服が可能です。

12歳未満の小児や、体重30kg未満の小児では内服ができません。

オルミエント®

オルミエント®(一般名: バリシチニブ)は、アトピー性皮膚炎に対して2番目に適応となったJAK阻害薬の飲み薬です。

アトピー性皮膚炎のほか、関節リウマチや、円形脱毛症にも適応があります。

16歳以上で1日1回4mgの内服を行います。

状態に応じて、1日1回2mgの内服に減量できます。

小児には適応がありません。

また重度の腎機能障害の患者さんは内服できず、中等度の腎機能障害では1日1回2mgへの減量が必要です。

サイバインコ®

サイバインコ®(一般名: アブロシチニブ)は、2021年12月に発売された比較的新しい薬剤であり、リンヴォック®、オルミエント®とは異なり、アトピー性皮膚炎が唯一の適応疾患となっています。

12歳以上で1日1回100mgの内服を行います。

状態に応じて、1日1回200mgへの増量が可能です。

中等度〜重度の腎機能障害の患者さんでは減量が必要です。

JAK阻害薬の副作用

JAK阻害薬は免疫機能を抑える働きがあるため、ヘルペスや帯状疱疹、上気道感染などの感染症にかかりやすくなります。

内服中に痛みを伴う水ぶくれが皮膚に出現したり、咳、喉の痛み、発熱などの症状がある場合には医師に相談しましょう。

このうち、帯状疱疹に関してはワクチンがありますので、50歳以上で適応がある場合は、JAK阻害薬の内服開始前にワクチンの接種を行うことで予防効果が期待できます。

内服中でもワクチン接種は可能ですが、不活化ワクチンのみが適応となり、生ワクチンは接種できません。

また、血液検査で肝機能障害や血球減少、クレアチニンキナーゼ(CK)値の上昇などがみられることがあるため、内服中は定期的な採血を行うことが推奨されています。

JAK阻害薬の費用の目安

例えばリンヴォック®の場合、費用の目安は以下のようになります(2022年4月時点の薬価に基づく)。

1錠(15mg)5,090円
1日1回15mgを1カ月間内服(28日)、3割負担の場合42,760円
2割負担の場合28,500円
1割負担の場合14,250円
リンヴォック®の費用の目安

なお、医療機関でJAK阻害薬の内服を含む高額な保険治療を行う場合、「高額療養費制度」、「付加給付制度」などを利用できる場合があります。

JAK阻害薬のまとめ

3種類のJAK阻害薬について表にまとめました(2023年1月時点)。

スクロールできます
リンヴォック®オルミエント®サイバインコ®
一般名ウパタシチニブバリシチニブアブロシチニブ
用法・用量1日1回15mg
状態に応じて
1日1回30mg
1日1回4mg
状態に応じて
1日1回2mg
1日1回100mg
状態に応じて
1日1回200mg
小児への適応12歳以上
かつ
体重30kg以上
適応なし12歳以上
妊婦への適応適応なし適応なし適応なし
腎機能高度の腎機能障害で
増量不可
重度の腎機能障害で
禁忌
中等度の腎機能障害で
減量
中等度〜重度
腎機能障害で減量
肝機能重度の肝機能障害で
禁忌
重度の肝機能障害で
禁忌
注意点プロベネシド内服中は
減量が望ましい
1カ月の薬剤費
(通常量/28日内服
3割負担の場合)
42,760円44,310円42,367円
各薬剤の比較

最後に

アトピー性皮膚炎の新規治療薬であるJAK阻害薬について解説しました。

JAK阻害薬は処方する医師・医療機関にも条件があります。

当院には以下の処方条件を満たした医師が在籍しておりますので、今後処方可能となりましたらお知らせいたします。

<医師要件>以下のいずれかの基準を満たすこと。

(ア)医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に、5 年以上の皮膚科診療の臨床研修を行っていること。

(イ)医師免許取得後 2 年の初期研修を修了した後に、6 年以上の臨床経験を有し、そのうち 3 年以上はアトピー性皮膚炎を含むアレルギー診療の臨床研修を行っていること。

(日本皮膚科学会 アトピー性皮膚炎におけるヤヌスキナーゼ(JAK)阻害内服薬の使用ガイダンスより)

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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