尋常性白斑の治療【皮膚科専門医が解説】

【今回のポイント】

■尋常性白斑は、後天性(生後に生じる)白斑の1つで、全人口の0.5%〜1%に発生すると言われています

■日本皮膚科学会が尋常性白斑の治療に関するガイドラインを策定しています

■年齢や部位、白斑の範囲などを考慮して外用薬や紫外線を用いた治療を選択します

目次

はじめに: 尋常性白斑とは

尋常性白斑は俗に「白なまず」とも呼ばれ、メラニン色素を産生する細胞(メラノサイト)の減少・消失により皮膚の一部に脱色素斑(色が白く抜ける部位)がみられる疾患です。

人種に差はあるものの発生率は全人口の約0.5〜1%と言われています。

原因としては遺伝的な要因や自己免疫、末梢神経の機能異常などが挙げられていますが完全には解明されていません。

尋常性白斑の診断

尋常性白斑は後天性(生後に生じる)白斑の1つであり、診断に至るまでには脱色素斑を呈する他の疾患、具体的には以下のような白斑を除外することが重要です。

■Vogt-小柳-原田病: 白斑の他、眼のブドウ膜炎や難聴などを伴います

■サットン現象: 色素性母斑(ほくろ)やメラノーマに白斑が合併することがあります

■感染症: 梅毒や癜風(真菌/カビの一種であるマラセチア菌による感染症)で白斑を認めることがあります

■白色粃糠疹: 湿疹やアトピー性皮膚炎に合併する脱色素斑で、小児によくみられます

■老人性白斑: 加齢により、メラノサイトが減少して白斑を呈することがあります

尋常性白斑の治療

尋常性白斑の治療としてもっとも一般的なものはステロイドの外用薬(塗り薬)ですが、他にも様々な治療法が実践されています。

2012年に日本皮膚科学会が「尋常性白斑診療ガイドライン」としてこれらの治療をまとめていますので、以下、ガイドラインに沿って解説していきます。

各項目には、ガイドラインで示されている治療の推奨度も併記しています(A: 行うよう強く勧められる、B: 行うよう勧められる、C1: 行うことを考慮してもよいが、十分な根拠がない、C2: 根拠がないので勧められない、D: 行わないよう勧められる)。

①ステロイド外用薬 推奨度: AないしB

ステロイド外用は体表面積の10%〜20%以下の白斑(限局型)においては第一選択となりうる治療法です。

おおよそ4〜6カ月外用し反応を確認することが多く、約半数の患者さんで75%以上の色素再生を認めると報告されています。

デメリットとしては、ステロイドを長期外用することによる局所的な副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、多毛など)のリスクがあり、皮膚科医の管理のもとで治療を継続することが重要といえます。

また、全身のあちこちに白斑が出現する汎発型では効果が乏しいため、推奨度は限局型でA、汎発型でBとなっています。

②活性型ビタミンD3外用薬 推奨度: C1-C2

活性型ビタミンD3外用薬は、主に尋常性乾癬に使用される塗り薬ですが、白斑の治療としても、ステロイド外用と同様に多くの医療機関で採用されている治療法です。

しかしながら、現時点では単独で使用した際の有効性に関してはっきりと判断できず、推奨度はやや低くなっています。

また、白斑に保険適応はないことに注意が必要です。

③タクロリムス軟膏 推奨度: B

タクロリムス軟膏は尋常性白斑に対する有効性が海外で多数報告されていることから、治療の選択肢の1つといえます。

ただし活性型ビタミンD3外用薬と同様に白斑に対しては保険適応がないこと、長期的なデータが乏しいことに注意が必要です。

また、使用開始直後は塗った部位に刺激やほてり感を感じることがあり、徐々に慣れることが多いものの、お肌の状態によっては使用しにくい薬剤となっています。

④PUVA療法 推奨度: B

PUVA療法はソラレン(Psoralen)という物質(塗り薬や飲み薬があります)と紫外線の一種であるUVAの照射を組み合わせた治療法です。

保険適応があり、有効な治療法と考えられていますが、紫外線を繰り返し照射することによる皮膚炎や、皮膚がんを中心とした発がんのリスクがあり、照射量や回数に制限があります。

また、現在では下記のナローバンドUVB療法が主流となってきており、PUVA療法を行う施設自体が少なくなってきているようです。

⑤ナローバンドUVB療法 推奨度: B

ナローバンドUVB(Nb-UVB)療法は、311±2nmという限られた波長の紫外線を皮膚に照射する治療法で、主に尋常性乾癬やアトピー性皮膚炎の治療として用いられます。

成人の尋常性白斑に対して有効な報告が多く、保険適応もあり、推奨度はBとなっています。

PUVA療法と同様、紫外線による発がんリスクを考慮し、照射量・回数を制限したり、皮膚所見の有無に十分注意しながら、皮膚科専門医が治療をコントロールすることが望まれています。

⑥エキシマレーザー/ライト療法 推奨度: C1

エキシマレーザー/ライト療法は308nmの波長の紫外線を照射する治療法で、尋常性白斑に対してナローバンドUVB療法よりも高い効果を示したデータがある一方、まだ大規模な試験が行われていないことを考慮し、推奨度はC1となっています。

また、照射機器の特性により広範囲に照射することは難しく、一般的には限局性の白斑に適応になるものと考えられます。

⑦その他

上記の他に治療ガイドラインではステロイド内服(推奨度C1)、植皮術(推奨度A-C1)、カモフラージュメイク(推奨度C1)などの治療法が解説されていますが、いずれも広く一般に浸透しているとは言い難く、推奨度も比較的低くなっています。

まとめ: 日本皮膚科学会の治療アルゴリズム

上記を踏まえて、日本皮膚科学会のガイドラインでは、15歳以下と16歳以上にわけ、治療のアルゴリズム(方法、手順)を策定しています。

それによれば、15歳以下ではステロイドやタクロリムス外用薬、活性型ビタミンD3外用薬などの外用治療が中心となり、16歳以上では外用薬に加えてNb-UVBやエキシマレーザー/ライト治療などが選択肢に入ってきます。

実際には、これらのアルゴリズムを参考にしつつ、白斑の範囲や部位(特に顔面に白斑があるか)、これまでの治療歴などにより治療を決定していく必要がありますので、白斑でお困りの際は皮膚科専門医の診察を受けることをお勧めします。

白斑の治療については以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

参考文献: 日本皮膚科学会「尋常性白斑診療ガイドライン」. 日皮会誌: 122(7), 1725-1740, 2012.

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