【ウイルス性イボ】尋常性疣贅の症状と診断・治療について【皮膚科専門医が解説】

目次

はじめに: 尋常性疣贅(ウイルス性イボ)とは

尋常性疣贅じんじょうせいゆうぜいとは、俗に「石イボ」とも呼ばれ、主に手足に生じる硬いブツブツで、皮膚にヒトパピローマウイルス(HPV: human papilloma virus)が感染することによって生じる疾患です。

HPVは多数のタイプ(型)に分かれ、尋常性疣贅は主に2a型、27型、57型のHPVが人から人に直接あるいはプールやジムなど公共の場で間接的に付着することで発症します。

なお、他の型のHPVが原因となる皮膚疾患としては扁平疣贅へんぺいゆうぜい(3型、10型)や尖圭コンジローマ(6型、11型)などがあり、尋常性疣贅と同様に「ウイルス性のイボ」のカテゴリーに含まれますが、できやすい部位や感染経路、治療法がそれぞれ異なります。

また、いわゆる「イボ」と呼ばれる疾患の中には、脂漏性角化症(老人性疣贅)や軟性線維腫、脂腺増殖症など「皮膚の小さなできもの」も含まれますが、これらはウイルスが原因ではないため、人から人に感染することはありません。

今回はウイルス性イボの中でももっとも一般的な、尋常性疣贅について解説します。

尋常性疣贅の症状

尋常性疣贅は大人にもできますが、一般的にはお子さんに多く生じます。

尋常性疣贅の原因であるHPVが皮膚に感染すると、数か月の潜伏期間を経て、数mm〜1cm程度の硬い丘疹(ブツブツ)が生じます。

一部のイボは近くに多発するとお互いにくっついて癒合し、1つの局面(平たい盛り上がり)を形成します。

自覚症状を伴うことは少ないものの、特に足の裏ではイボが硬いところに当たったり、巨大化して亀裂(ひびわれ)ができると痛みを伴うことがあります。

顔や首にできた際には細く飛び出た形になることがあり、この場合は「糸状しじょう(指状)疣贅」とも呼ばれます。

尋常性疣贅の診断

尋常性疣贅の診断は通常肉眼(見た目)で行います。

肉眼のみで診断が難しい場合は、硬い部分をメスで削ったり、ダーモスコープという拡大鏡を用いてより詳細に皮膚の状態を観察します。

これらの方法でも尋常性疣贅かどうかはっきりしない場合、皮膚の一部を切り取って(皮膚生検)、顕微鏡で組織検査を行うことを検討します。

尋常性疣贅の治療

尋常性疣贅は、皮膚科で保険で治療することが可能です。

保険適応のある主な治療法は以下となります。

①液体窒素療法

−196℃の液体窒素を使用し、イボを直接冷やして凍結させる方法です。

複数回の治療を基本とし、1回の治療から次の治療までは1週間以上の間隔を空けます。

液体窒素をイボに当てる際には、綿棒を使う方法のほか、スプレーで液体窒素を当てる、冷やしたピンセットでイボを直接つまむなどの方法があり、部位やイボの大きさにより適切な方法を選択します。

いずれの治療法も、全身的な副作用の心配はありませんが、治療した部位に痛みや赤みを生じることがあります。

これらの症状は通常、当日中ないし翌日には消失しますが、翌日以降も強い痛みが続いたり、皮膚に水ぶくれができるなどの変化が現れた際には、病院の受診を検討してください。

また、治療した部位に色素沈着を生じる可能性もあるため、特に顔や首など目にみえる部位にイボができている場合は、慎重に治療を行います。

②ヨクイニン内服

ヨクイニンはハトムギのエキスからなる薬剤であり、イボのウイルスに対する免疫を活性化させる作用があるとされています。

ヨクイニンの利点として内服のため液体窒素のような痛みを伴わないこと(ただし液体窒素療法と併用することもあります)、お子さんでも内服可能なことが挙げられます。

成人では錠剤の場合1回6錠を1日3回、顆粒(粉薬)の場合は1回1包を1日3回食前に内服します。

お子さんの場合は通常減量して内服します。

副作用としてはまれに胃部不快感や下痢等を生じることがあり、これらの症状があらわれた際には内服の継続に関して医師と相談しましょう。

③サリチル酸外用

サリチル酸という薬剤を外用または貼付(皮膚に貼り付ける)方法です。サリチル酸には角質を柔らかくする作用のほか、イボに対する免疫を活性化させる作用もあるといわれています。

日本では5%ないし10%のサリチル酸ワセリン外用や50%サリチル酸絆創膏(スピール®膏)などがあり、特に角質除去に対して保険適応のあるスピール®膏が処方される機会が多くなっています。

スピール®膏を使用する際はイボの大きさに応じてカットし、皮膚に直接貼り付けます。

貼り付ける範囲が広すぎると周りの皮膚が薬の作用でめくれ、痛みを生じることがあるので注意してください。

④その他の治療法

そのほかに、日本皮膚科学会のガイドラインでは、外科的切除や各種レーザー治療(CO2レーザーなど)、外用薬・内服薬(飲み薬)、接触免疫療法などの選択肢が提示されていますが、治療内容によっては保険適応がないことに留意する必要があります。

自然治癒について

尋常性疣贅はHPVを原因とするウイルス感染症であり、感染した人の中には一定数、HPVに対する免疫ができることによる自然治癒があり得ます。

特にお子さんの場合は自然治癒の例も多いため、症状の程度や経過に応じて、治療方法を選択していくことが大切です。

最後に

尋常性疣贅の診断や治療について解説しました。

当院の院長は大学病院で尋常性疣贅の治療に長年携わっておりましたので、お困りの方はぜひ一度ご相談いただければと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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