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ここ最近、東京都において梅毒の感染が急増しているというニュースが報じられるようになりました。
2022年に都内で報告された梅毒の感染数は3,677件で、1999年の調査開始以来過去最多です。
特に女性(多くは20代)の感染報告は、この10年で40倍となりました。
2023年3月には、東京都が梅毒の無料検査所を、都内4カ所(新宿/女性のみ、錦糸町、立川、多摩センター)に1日ずつ設置する予定となっています。
今回は梅毒の原因や症状、検査と治療について解説します。
梅毒はトレポネーマ/Treponema pallidumという細菌の感染症です。
主な感染経路は性行為ですが、妊娠中の母親から胎盤を通じて胎児に感染することもあります(先天性梅毒)。
梅毒は感染直後は無症状であり、およそ10〜90日の潜伏期間(平均3週間と言われています)の後に下記のような症状が出現します。
すなわち、感染経路については、症状の発症から数週間、遡って考えなくてはいけません。
梅毒の症状は感染後の期間によって1期〜4期にわけることができます。
1期では陰茎・外陰部など感染した部位を中心に痛みを伴わないしこり(硬結)が出現し、まれに潰瘍となります。
また、感染部位付近のリンパ節が腫れることがあり、この場合も痛みは乏しいとされています。
1期の症状は一旦自然に改善しますが、治癒したわけではないので注意が必要です。
2期梅毒では全身の皮膚に赤い斑点(紅斑)やブツブツ(丘疹)が出現します。
一般的に他の細菌・ウイルス感染症では皮疹がみられないような手のひらや足の裏にも症状が出ることが特徴です。
この皮疹は「バラ疹」と呼ばれます。
皮膚症状のほか、全身のリンパ節の腫れや、脱毛、髄膜炎、肝炎や腎炎などを生じることもあります。
眼に炎症が及ぶとぶどう膜炎や網膜炎、視神経炎をきたします。
3期梅毒は治療法が確立した現在では少なくなっていますが、無治療の場合はおよそ1/3の方で発症します。
この時期には、梅毒性肉芽腫(ゴム腫)と呼ばれるしこりが皮膚のほか、骨や筋肉に出現します。
3期以降の梅毒では、他の人に感染すること(感染性)はなくなります。
4期梅毒では、主に中枢神経や血管が侵され、大動脈炎・大動脈瘤や進行性の麻痺を生じます。
梅毒は血液検査で抗体価を測定することで診断が可能です。主に以下の2種類の検査を行います。
梅毒以外でも上昇することがありますが、疾患活動性(病気の勢い)を知ることができる検査です。
検査法は複数ありますが、RPR(Rapid Plasma Reagin)法が一般的であり、検査結果の項目としては「RPR」と表示されます。
感染のごく初期(1〜2週程度)では陰性であることに注意が必要です。
梅毒感染時に出現する抗体で、梅毒以外の疾患で上昇することはありません。
疾患活動性は反映せず、梅毒が治癒した後も陽性のまま推移します。
また、STSより遅れて陽性となります。
STSと同様に、複数の検査法があり、FTA-ABS法、TPHA法、TPLA法などが用いられます。
検査結果の項目にもこれらのいずれかが表示されます。
上記の2種類の検査を組み合わせることで、以下のことがわかります。
STS (RPR) | TP (FTA-ABS/ TPHA/ TPLA) | 解釈 | 注意点 |
陰性 | 陰性 | 梅毒非感染 | 梅毒感染後の ごく初期では STS陰性 この場合 数週間あけて 再検査を 検討する |
陽性 | 陰性 | 梅毒感染 初期 もしくは 生物学的 偽陽性 | 梅毒以外の 疾患でも STS陽性に なりうる (生物学的 偽陽性) |
陽性 | 陽性 | 梅毒感染 もしくは 治療中 | |
陰性 | 陽性 | 梅毒治癒後 もしくは 治療中 | 梅毒治癒後も TPは 陽性のまま |
梅毒は細菌感染症であるため、抗菌薬(抗生物質)を用いた治療を行います。
内服を行う場合はペニシリン系の抗菌薬が第一選択であり、一般的にはサワシリン®(一般名: アモキシシリン)が処方されます。
内服期間は1期であれば2〜4週間、2期であれば4〜8週間程度となります。
また、抗菌薬の血中濃度を高める目的で、ベネシッド®(一般名: プロペネシド)という痛風治療薬を一緒に内服することもあります。
ペニシリン系の抗菌薬にアレルギーのある方では、ミノマイシン®(一般名: ミノサイクリン)など他の系統の抗菌薬を使用します。
2022年に、梅毒に対するペニシリン系抗菌薬の注射薬、ステルイズ®(一般名: ベンジルペニシリンベンザチン水和物)が発売されました。
内服薬と異なり、数回の投与で済むのが特徴です。
具体的には成人の場合、(1)早期梅毒(1期、2期): 240万単位を1回、(2)後期梅毒(3期、4期): 240万単位を週1回、計3回投与です。
投与方法は筋肉注射となります。
梅毒(特に2期梅毒)の治療開始後、6〜12時間以内に皮膚の赤みや発熱がみられることがあり、これをJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応と呼びます。
梅毒の原因菌であるTreponema pallidumが急激に死滅することにより生じるもので、翌日には症状の改善が認められますので、治療はそのまま継続します。
梅毒の症状や検査、治療について解説しました。
梅毒は近年増加傾向にありますが、早期発見・治療により治癒が期待できる疾患です。
お困りの際は皮膚科をはじめとして、梅毒の診察が可能な医療機関への受診をお勧めします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。