さいたま市浦和区高砂1-16-12【地図へ】
JR浦和駅直結・アトレ浦和West Area4階
TEL: 048-883-4112
【今回のポイント】
■ステロイド外用薬(塗り薬)には抗炎症作用があり、湿疹の赤みやかゆみを抑える効果が期待できます
■多くの疾患に対して有効ですが、使用中は副作用にも注意が必要であり、使用する部位によってランク(作用の強さ)を決定する必要があります
■特に薬剤の吸収率が良い顔面は副作用のリスクも高く、手など他の部位に処方されたステロイド外用薬を自己判断で使用することは避けましょう
ステロイド外用薬(塗り薬)は抗炎症作用を持ち、湿疹の赤みやかゆみを抑える効果が期待できます。
皮膚科では治療のためにさまざまな種類の外用薬を用いますが、その中でも処方される頻度が多い薬剤といえます。
軟膏やクリーム、ローションなどのタイプがあり、使用する部位や皮膚の状態によって使い分けることが可能です。
ステロイド外用薬は多くの疾患に対して有効な薬剤ですが、使用中は以下のような副作用に注意する必要があります。
なお、高血糖・高血圧や骨粗しょう症(骨がもろくなる)など、ステロイドの内服薬や注射で生じうる全身的な副作用については、外用薬によって生じることは基本的にありません。
また、ステロイド外用薬による副作用の1つと思われがちな色素沈着(皮膚が茶色くなる、黒ずむ)に関しては実際には副作用ではなく、湿疹によりメラノサイト(メラニン色素をつくる細胞)が活性化することが原因で、湿疹の「後遺症」ともいえます。
色素沈着を予防するためには、湿疹に対して早期からしっかりとステロイド外用薬を使うことが重要です。
ステロイド外用薬は抗炎症作用の強さによって5つのランクに分けられており、強いものから順に、ストロンゲスト/strongest(最も強い)、ベリーストロング/very strong(とても強い)、ストロング/strong(強い)、ミディアム/medium(普通)、ウィーク/weak(弱い)と呼ばれています。
また数字でI〜V群(Iがストロンゲスト、Vがウィークに相当)に分けられることもあります。
以下に代表的なステロイド外用薬の名称と、そのランクを示します。
ランク | 商品名(一般名) |
I群 ストロンゲスト strongest | デルモベート® (クロベタゾールプロピオン酸エステル) ダイアコート® (ジフロラゾン酪酸エステル) |
II群 ベリーストロング very strong | フルメタ® (モメタゾンフランカルボン酸エステル) アンテベート® (酪酸プロピオン酸ベタメタゾン) トプシム® (フルオシノニド) リンデロンDP® (ベタメタゾンジプロピオン酸エステル) マイザー® (ジフルプレドナート) ビスダーム® (アムシノニド) テクスメテン®、ネリゾナ® (吉草酸ジフルコルトロン) パンデル® (酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン) |
III群 ストロング strong | エクラー® (デプロドンプロピオン酸エステル) メサデルム® (プロピオン酸デキサメサゾン) ボアラ®、ザルックス® (デキサメタゾン吉草酸エステル) アドコルチン® (ハルシノニド) ベトネベート®、リンデロンV® (ベタメタゾン吉草酸エステル) プロパデルム® (ベクロメタゾンプロピオン酸エステル) フルコート® (フルオシノロンアセトニド) |
IV群 ミディアム medium | リドメックス® (吉草酸酢酸プレドニゾロン) レダコート®、ケナコルトA® (トリアムシノロンアセトニド) アルメタ® (アルクロメタゾンプロピオン酸エステル) キンダベート® (クロベタゾン酪酸エステル) ロコイド® (ヒドロコルチゾン酪酸エステル) グリメサゾン®、オイラゾン® (デキサメタゾン) |
V群 ウィーク weak | プレドニゾロン® (プレドニゾロン) |
作用が強いステロイド外用薬は湿疹の赤みやかゆみを早期に改善させることが期待できる反面、不適切な使用法により副作用が出現するリスクも高まります。
副作用を回避するためには、正確な診断を行った上で、塗る部位に応じて適切な強さのステロイド外用薬を選択することが重要です。
ステロイド外用薬は塗る部位によってその吸収率が異なリます。
前腕(肘〜手首まで)内側の吸収率を「1」とした場合の、他の部位の吸収率を以下に示します。(参考文献: Feldmann ER et al: J Invest Derm. 48, 181-183, 1967)
吸収率が高いほど、効果が出やすい反面、副作用の出現にも注意が必要です。
部位 | 吸収率 |
頭皮 | 3.5 |
前頭部(おでこ) | 6.0 |
下顎部(あご) | 13.0 |
腋窩(わき) | 3.6 |
背部 | 1.7 |
前腕外側 | 1.1 |
前腕内側 | 1.0(基準) |
手掌(手のひら) | 0.83 |
陰嚢 | 42.0 |
足首 | 0.42 |
足底(足の裏) | 0.14 |
この表を実際の治療に当てはめると、
①吸収率が高い(数字が大きい)部位:ステロイド外用薬による効果が比較的得られやすいが、副作用のリスクも高い
②吸収率が低い(数字が小さい)部位:ステロイド外用薬による副作用のリスクは比較的低いが、効果も得られにくい
ということがいえます。
そのため、手や足の湿疹に対してはあえて強めのステロイド外用薬が処方されることもあります。
このような強めのステロイドを顔面に外用すると、必要以上に強い作用が生じ、副作用の出現リスクが高まるため、
手に処方されたステロイドを顔に塗るのは基本的にNGです。
以前相談したところと別の部位に湿疹が生じたときには、自己判断で以前の処方を使用することはせず、皮膚科医に相談しましょう。
同じ理由から、大人に処方されたステロイド外用薬を、そのまま小児に使用することも推奨されません。
当院では患者さん1人1人の症状にあった適切なステロイド外用薬を処方し、副作用に留意しつつ最大限の効果を発揮させることに努めます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。