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アレルギーとは、本来ウイルスや細菌などの異物を体内から排除するための免疫システムが、何らかの原因で異常をきたし、花粉や食物など、通常は無害なものに対しても過剰に反応してしまう状態のことです。
具体的にはくしゃみや鼻水、皮膚のかゆみ、蕁麻疹などがアレルギーの症状として挙げられますが、重症になると呼吸困難や血圧の低下など、命に関わる重篤な症状(アナフィラキシーショック)を招くこともあり注意が必要です。
今回は食物アレルギーの一種である口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome: OAS)と花粉との関係、対処法について解説します。
口腔アレルギー症候群は、その名の通り口の中に限局したアレルギー症状で、食物アレルギーの中でも特殊なタイプと考えられています。
典型的な症状としては、原因となる食物を摂取後、15分程度で食物が触れた部位(口唇、口腔粘膜、咽頭粘膜)にムズムズ、イガイガといった刺激感や浮腫(むくみ)を生じます。
通常、これらの症状は自然に治まりますが、重症化した場合は瞼の浮腫や鼻水、腹痛・下痢などの消化器症状に加えて、蕁麻疹などの皮膚症状、ときにアナフィラキシーショックを生じることもあります。
特定の花粉症をお持ちの方がその花粉に類似する食物内のタンパク質にもアレルギー反応を示し、結果として口腔アレルギー症候群(OAS)を発症することがあり、これを花粉-食物アレルギー症候群(pollen-food allergy syndrome: PFAS)と呼んでいます。
例えば、スギ花粉症をお持ちの方は、スギ花粉と似た構造のタンパク質を持つトマトに対して口腔アレルギーを発症する可能性があります。
とはいえ、ほとんどの方は問題なくトマトを食べることが可能ですので、過度に心配する必要はありません。
以下に代表的な花粉の種類と、それに関係する食物アレルギーの一覧をお示しします。
季節 | 花粉 | 関連する食物 |
1〜6月 | ハンノキ シラカンバ | リンゴ モモ 大豆(豆乳) など |
2〜5月 | スギ ヒノキ | トマト |
4〜10月 | オオアワガエリ カモガヤ | メロン スイカ キウイ など |
6〜11月 | ヨモギ | セロリ ニンジン など |
6〜11月 | ブタクサ | メロン スイカ など |
口腔アレルギー症候群(OAS)の診断は、蕁麻疹などの全身症状を伴う一般的な食物アレルギーと同様、病歴(どのようなタイミングで、どの食物を摂取して発症したか、など)の詳細な聴取に加えて種々のアレルギー検査を行い、その結果を総合的に判断することで行います。
しかしながら、アレルギーの検査として最初に行われることの多い、血液を用いた食物の特異的IgE検査は、口腔アレルギー症候群の方では陽性率が低く、検査の結果で陰性=摂取可能とは必ずしもならないことに注意が必要です。
現時点では、口腔アレルギー症候群(OAS)を確実に治癒させる方法は確立されておらず、治療の基本は①原因となる食物の回避と、②症状出現時の薬物療法、の2つです。
特定の野菜や果物など、原因となっている食物が明らかな場合は、その食物の摂取を避けることでアレルギーの発症が予防できます。
また、生の食物では症状が出る場合でも、加熱したものや加工食品は摂取が可能な場合もあります。
しかしながら、豆乳や桃など一部の食物においては、加熱してもアレルギー症状が出現する場合があるため注意が必要です。
口腔アレルギー症候群(OAS)の症状である口唇や口腔内のムズムズ、イガイガや浮腫を生じた際は、摂取後時間が経てば自然に治まることがほとんどですが、症状の程度によってはアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬の内服を検討します。
この際に内服する抗ヒスタミン薬としては、最高血中濃度に到達する時間が短い(すなわち、内服後に速やかに効果を発揮する)薬剤が良いと考えられます。
過去に食物アレルギーが原因でアナフィラキシーショックになった方や、今までの症状から今後アナフィラキシーショックを生じる可能性が高い方に対しては、エピペン®(一般名: アドレナリン)注射液の処方が可能です。
エピペン®を処方された場合には常に携帯し、アナフィラキシーを疑った場合には速やかに自己注射を行います。
遅れて再度ショック症状が現れることもあるため、その後は必ず医療機関を受診するようにしてください。
現在、日本ではスギ花粉症に対する治療としてシダキュア®(一般名: スギ花粉エキス錠)を用いた舌下免疫療法が可能です。
舌下免疫療法とは、少量のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質、この場合はスギ花粉)を継続的に体内に取り込むことで、体を慣れさせ、アレルギーの出現を抑制していく治療法です。
理論的には、スギ花粉のアレルギーが抑制されれば、関連する食物すなわちトマトに対するアレルギーも抑制されることが期待できますが、スギ花粉以外の花粉症に対する舌下免疫療法は確立されておらず、口腔アレルギー症候群(OAS)の原因となる食物そのものについても、現時点では舌下免疫療法の適応はありません。
口腔アレルギー症候群(OAS)と花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)について解説しました。
アレルギーに関しては未だ解明されていない点が少なくないものの、将来的にはこれらの疾患に対する正確な検査や、積極的な治療が行えるようになることが期待されます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。