蒙古斑・異所性蒙古斑について【自然に治る?適切な治療のタイミングは?】

【今回のポイント】

■腰やおしり付近にできる通常の蒙古斑は5、6歳時までに自然消退することが多く、さほど問題になりません

■顔や背中、手足などにできる異所性蒙古斑は、保険適応でレーザーによる治療が可能です

■異所性蒙古斑に対して積極的な治療を行う場合は、早期からレーザー照射の開始を検討します

目次

はじめに: 蒙古斑とは

蒙古斑は別名を「先天性真皮メラノサイトーシス(congenital dermal melanocytosis)」といい、新生児の体(主に腰、おしり)にできる青〜灰色の斑点を指します。

日本人を含む黄色人種ではほぼ100%みられますが、他の人種においては黒人が約80〜90%、白人が5%程度と、発症の頻度には人種差があります。

蒙古斑の原因

蒙古斑の色は「メラノサイト」と呼ばれる細胞が、メラニン色素を産生することでみられるものです。

通常、胎児が成長する過程で、メラノサイトは皮膚の深いところ(真皮)から浅いところ(表皮)に移動します。

ところがこの途中で一部のメラノサイトが真皮に残存することがあり、この「真皮メラノサイト」が産生するメラニン色素が蒙古斑の原因となります。

メラノサイトは全身の皮膚に存在するため、腰やおしり以外にも顔や背中、手足に蒙古斑ができることがあり、これを「異所性いしょせい蒙古斑」と呼びます。

蒙古斑の診断

蒙古斑は、その特徴的な色・形状と、生後すぐに見られるという点から肉眼的に診断可能です。

蒙古斑同様、乳幼児期に真皮のメラノサイトが増殖する疾患として「青色母斑せいしょくぼはん」があり、色は蒙古斑と似ていますが、青色母斑は大きさが通常1cm以下であること(蒙古斑は数cm〜10cm以上に及ぶことも珍しくありません)、多発することは少ない点が蒙古斑と異なり、両者の鑑別は容易です。

蒙古斑の治療

腰やおしり付近に生じる通常の蒙古斑は、生後1週〜1ヶ月程度でみられ、2歳頃までは色調が濃いままですが、その後徐々に薄くなり5、6歳時までにはほとんど消えてしまうため、さほど問題にはなリません。

一方で、異所性蒙古斑は消えるまで時間がかかりやすく、さらに一部は成人に至るまで完全に消退しないことがあるため、特に色が濃いものや露出部(顔や手足など人目につく部位)にあるものについては見た目の問題からレーザーによる治療が検討されます。

(1)異所性蒙古斑の治療法

異所性蒙古斑の治療には、真皮のメラニン色素に反応するレーザーを用います。

具体的には、「Qスイッチルビーレーザー」と、「Qスイッチアレキサンドライトレーザー」、「Qスイッチヤグ(YAG)レーザー」が、異所性蒙古斑の治療に関して保険適応のある機器となっています(2023年1月現在)。

他のレーザー(例えば「ピコレーザー」など)は、保険適応がありませんので注意が必要です。

また、保険適応のあるレーザーでも、照射回数や期間に制限がありますので、詳しくは受診時にお問い合わせください。

※現在当院での治療実施については未定であり、連携医療機関への紹介となる場合があります。

(2)治療開始・終了のタイミング

異所性蒙古斑は早期に治療を開始する方が治療効果が高い(色が消えやすい)とされていますので、治療を希望される場合は幼小児期からレーザーの照射を開始していきます。(成人になってからの治療ができないということではありません)。

レーザー治療を行う場合、以下のような点に注意が必要です。

①痛み: 皮膚へのレーザー照射は多少なりとも痛みを伴うため、事前に麻酔のテープを貼るなどの対策を行いますが、治療が患児本人のストレスになる場合は無理には継続せずに経過観察とすることがあります。

②術後処置: レーザー照射後、当日からシャワーは可能ですが、皮膚の状態によって1〜2週間程度、ご自宅での軟膏処置が必要になります。

③遮光: レーザー照射後しばらくは紫外線による色素沈着のリスクがあり、日焼け止めなどのスキンケアと遮光が必須です。

このため、紫外線量の多い夏季や、屋外での活動時間が増える小学校入学後などは、一旦治療を休止し経過観察とすることもあります。

また、治療開始後に明らかな改善傾向がみられ、色調が薄くなった際には、その後の自然軽快を期待して治療を終了します。

最後に

蒙古斑・異所性蒙古斑については以上となります。

院長は以前大学病院でレーザー専門外来を担当しておりましたので、蒙古斑・異所性蒙古斑の診断と治療に関しても豊富な経験を有しています。

お子様のお肌で心配なことがありましたらお気軽にご相談ください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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