子どもに多い皮膚疾患(2)伝染性軟属腫(水いぼ)

目次

はじめに

今回は伝染性軟属腫でんせんせいなんぞくしゅについてです。

「水いぼ」の名前でも知られており、乳幼児〜小児に好発しますが、大人でもまれにみられることがあります。

(一般的にはこちらの名前の方が馴染みがあるため、以下「水いぼ」と記載します)

原因や症状、治療について簡単にまとめます。

伝染性軟属腫(水いぼ)の原因

水いぼの原因はポックスウイルス科に属する伝染性軟属腫ウイルスの感染症です。

2022年に話題になったサル痘ウイルスも同じポックスウイルス科ですが、両者の間に関連はなく、症状も異なります。

また、手足にできることの多い尋常性疣贅じんじょうせいゆうぜい(ウイルス性いぼ)はヒトパピローマウイルスの感染症であり、こちらも水いぼとは異なる病気です。

伝染性軟属腫ウイルスは皮膚表面の細かい傷や毛穴などから侵入し、皮膚に定着・増殖することで感染が成立します。

接触感染するウイルスであり、皮膚と皮膚の直接の接触以外にも、タオルなどを介して他人に感染することがあります。

また、自分の体を引っ掻いたり、皮膚同士が擦れることで近くの皮膚にウイルスが飛び散り、どんどん増えていくことも珍しくありません。

水いぼの増加を防ぐためには、日頃から皮膚を清潔に保ち、乾燥による湿疹や細かい傷を生じないよう、しっかり保湿することが重要です。

伝染性軟属腫(水いぼ)の症状

水いぼは全身どこにでも生じますが、お子さんの場合は四肢(腕や足)や体幹に多く生じ、特に擦れやすい下腹部や外陰部、大腿(ふともも)の内側、腋窩(脇の下)などで多発します。

それぞれの発疹は約2〜10mm程度のぶつぶつで、光沢があり、その中心には「中心臍窩さいか」と呼ばれる「へそ」を有しています。

ときに発疹を中心にかゆみや湿疹を生じたり、化膿して赤く腫れることがあります。

なお、伝染性軟属腫ウイルスの潜伏期間(感染してから実際に症状が出るまで)は14日〜50日程度とされていることから、明らかな感染源(誰から・どこからうつったか)がわからないこともあります。

伝染性軟属腫(水いぼ)の治療

水いぼの治療法はいくつか存在しており、中には治療せずに経過を見るという選択肢もあります。

それぞれについて詳しくみていきましょう。

①鑷子(せっし、ピンセット)での摘除

トラコーマ鑷子せっしという器具を用いて水いぼを1つずつつまみ、摘除していく方法です。

最も早く、確実な治療法ですが、摘除の際に痛みが生じるため、お子さんによっては嫌がってしまい、途中で治療を中断せざるを得ないこともあります。

特に小さい水いぼが多数存在する場合は、何度かに分けて摘除したり、他の治療法への変更を検討します。

また、痛みを軽減する目的で、摘除したい部位にあらかじめ局所麻酔用のテープを貼ることもあります。

②硝酸銀外用

硝酸銀という物質をペースト状にしたものを水いぼに塗っていきます。

摘除と比較すると痛みが少ないのが特徴ですが、1つの水いぼに対して複数回の治療を要する場合が多いです。

硝酸銀を塗った後乾燥させると、黒く変化しその後数日でかさぶたになり剥がれてきます。

1〜2週間おきに通院し、治療するのが一般的です。

最近では銀の成分が含まれた水いぼ専用のクリームもあり、医療機関で購入する必要がありますが、ご自宅で外用することが可能です。

③液体窒素療法

水いぼを-196℃の液体窒素で凍らせ、ウイルスを死滅させることで治療します。

摘除ほどではないものの多少の痛みを伴います。

また、硝酸銀外用と同様、1つの水いぼに対して複数回の治療を要する場合が多いです。

治療後は数日でかさぶたとなり剥がれてきますが、反応が強いとひりつきが持続したり、水ぶくれを生じることがありますので、異常を感じた際には、早めに皮膚科を受診して相談しましょう。

1〜2週間おきに通院し、治療するのが一般的です。

④自然に治るのを待つ(経過観察)

お子さんが治療に対して強い拒絶を示したり、水いぼの数が少ないときは、あえて何もせず経過を見ることもあります。

しかしながら、水いぼは伝染性軟属腫ウイルスに対する免疫がつくと自然に治るとされているものの、治るまでの期間は半年〜数年と幅広く、途中でどんどん増えてしまうことも少なくありません。

そのため、最初は経過観察としていても、途中で積極的に治療する方針に切り替えることもあります。

⑤その他

上記の治療以外にも、複数の治療を組み合わせる、貼り薬や飲み薬を使用するなど、水いぼの治療は多岐にわたります。

それは、「100%効果のある、オンリーワンの治療」がないということの裏返しでもあります。

治療している途中で新たな水いぼが出てくることもあるため、特に小さなお子さんの場合は痛みに配慮し、焦らずに治療を継続していくことが大切です。

伝染性軟属腫(水いぼ)のかゆみ

治療中(経過観察も含む)に、水いぼの一部もしくはすべてに赤みを生じ、かゆみが出ることがあります。

これは水いぼに対する免疫が確立しつつあるサインであり、水いぼが治る一歩手前の状態と考えられています。

しかしながら完全に治癒する前に皮膚を引っ掻いてしまうとそこからまた水いぼが増えてしまうため、水いぼが残っているうちはかゆみをしっかりコントロールする必要があります。

伝染性軟属腫(水いぼ)にかかったら学校は行っても良い?プールは?

水いぼにかかっても学校を休む必要はありませんが、プールに入る際には配慮が必要です。日本小児皮膚科学会、日本臨床皮膚科医会以下のような統一見解を示しています。

プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。

日本小児皮膚科学会 お役立ちQ&A「みずいぼ」: http://jspd.umin.jp/qa/01_mizuibo.html

ただし、地域・学校によっては独自のルールを定めているところもありますので、水いぼと診断されたら、学校の先生や医師、保育士さんなどとよく相談してください。

最後に

当院では水いぼの治療に伴う痛み、かゆみに配慮し、それぞれの患者さんにあった治療法をご提案いたします。

水いぼについては以上です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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