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今回はシミなどの色素沈着症の治療に使用されるハイドロキノンについての解説です。
ハイドロキノンは元々麦芽やコーヒーに含まれている天然の化合物ですが、メラニン色素を合成するチロシナーゼという酵素の活性を阻害する働きがあり、色素沈着症の治療薬として海外では長年の歴史があります。
また、それに加えて、ハイドロキノンにはメラニン色素を生成する細胞である、メラノサイトを減少させる(細胞毒性)作用もあるとされています。
上記のように、ハイドロキノンの主な作用はメラニン色素の産生を抑制することです。
メラニン色素は主に表皮のもっとも深いところにある基底層でつくられており、皮膚の細胞とともに徐々に表層に押し上げられ、最終的には角質として皮膚の表面から剥がれ落ちます。
皮膚の細胞が入れ替わる一連のプロセスをターンオーバーと呼びますが、ハイドロキノンを継続して使用することにより、持続的にメラニンの生成を抑制し、皮膚の色調を改善する効果が期待できます。
ハイドロキノンは、主に以下のような疾患に使用されます。
いわゆる「シミ」で、主に中年以降の人の顔や手背(手の甲)など、長期間紫外線に当たっていた部位によく発生します。
ハイドロキノンの外用薬に加えて、トレチノインなど他の外用薬や、レーザー治療を併用することもあります。
主に目の下から頬にかけて左右対称にできる褐色の斑点で、女性ホルモンによりメラノサイトが刺激されることや、紫外線、摩擦などの悪化要因が加わって生じると考えられています。
また、妊娠を契機に発症・増悪することがあります。
通常のシミ(日光黒子/老人性色素斑)とは異なり、レーザー治療で逆に色素沈着が悪化することもあるため、診断の段階で肝斑かどうか見極めることは非常に重要です。
湿疹やニキビ、やけどなどにより皮膚に炎症が生じると、その後に色素沈着を残すことがあります。
これを炎症後色素沈着と呼び、自然な経過で改善する(概ね6か月〜1年程度)ことが多いものの、難治である場合は、外用薬やレーザーでの治療を検討します。
いわゆる「ソバカス」です。
幼少期(3歳頃)から顔面・頚部・前腕など日光の当たる部位に、数mm大の褐色の斑点が多数生じます。
遺伝的な要因があると考えられており、夏に色が濃くなり、冬には改善・軽快するという特徴があります。
日光黒子/老人性色素斑と同様に、ハイドロキノンの外用薬のみで効果が乏しい場合、トレチノインなど他の外用薬や、レーザー治療を併用することもあります。
2001年より、日本でも規制緩和により市販の美容化粧品にハイドロキノンの配合が可能となりました。
薬局などで気軽に購入できる点がメリットですが、医療機関で購入できるものよりも、配合されているハイドロキノンの濃度は低くなっています。
そのため、より高い効果を求める場合は、医療機関での相談が望ましいと考えられます。
ハイドロキノンには以下のような副作用があるため、異常を自覚した際は使用を中止し、医師に相談しましょう。
赤み、ひりつき、かぶれ
刺激感(ピリピリとした感覚)
長期の使用による白斑
上記のうち、特に赤みや刺激感などの副作用は、濃度に依存することが多いため、肌の弱い方に対しては低い濃度の外用薬で治療を開始することを検討します。
また、使用が長期にわたると予想される場合は、休薬期間を設ける場合もあります。
ハイドロキノンは1日1〜2回、洗顔後に外用するのが一般的です。
使用中は日焼け止めを用いてしっかりと紫外線対策を行うようにしてください。
また、ハイドロキノンの外用薬は熱や光で変性しやすいため、普段は冷蔵庫などの冷暗所で保管する必要があります。
トレチノインは、ハイドロキノンと同様に、医療機関で購入できる外用薬の1つです。
トレチノインの成分はビタミンA誘導体であり、表皮の細胞分裂を促進させる働きがあります。そのため、皮膚のターンオーバーがスピードアップし、メラニン色素の排出も早くなります。
また、その他トレチノインに特徴的な作用として、過剰な皮脂分泌や毛穴の詰まりを抑制することによるニキビの改善や、真皮の繊維芽細胞を活性化させることによる小じわや肌の張りの改善が挙げられます。
トレチノインはハイドロキノンと併用することが可能であり、両者を同時に使用することによって①ハイドロキノンによる色素産生の抑制、②トレチノインによる色素排出の促進、の2つの効果が期待できます。
ただし、トレチノインもハイドロキノンと同様に外用した部位に刺激感や赤みを生じることがあるため、併用する際にはこれらの症状の出現に注意が必要です。
今回は美容皮膚科領域でよく用いられる、ハイドロキノンについて解説しました。
ハイドロキノンの処方は自費診療となっており、当院でも採用が決定しましたらお知らせいたします。
ここまでお読みいただきありがとうございました。