さいたま市浦和区高砂1-16-12【地図へ】
JR浦和駅直結・アトレ浦和West Area4階
TEL: 048-883-4112
蕁麻疹は一過性の膨疹(ミミズ腫れのような、膨らんだ赤み)が皮膚に出没する疾患です。
蕁麻疹では、アレルギー性、もしくは何らかの誘因による非アレルギー性の反応によって、皮膚の真皮内に存在するマスト細胞からヒスタミンなどの化学物質が放出されます。
この化学物質が皮膚の血管や神経に作用し、膨疹やかゆみといった症状が出現します。
膨疹は通常24時間以内に色素沈着を残さず消退することが特徴であり、その形状は円形、楕円形、地図状など様々です。
蕁麻疹の分類には、主に以下のようなものがあります。
明らかな誘因がなく発症する蕁麻疹で、症状は基本的に毎日のように出没し、病院を受診される患者さんの中でもっとも多いタイプです。
発症してからの時期により、6週間以内のものを急性蕁麻疹、6週間以上のものを慢性蕁麻疹と分けて呼ぶこともあります。
急性蕁麻疹は特にお子さんでは上気道炎や胃腸炎などの感染に伴うものが多く、原因が特定されない場合でも適切な治療によりほとんどは1カ月以内に治癒しますが、慢性蕁麻疹では原因が特定不能で、治癒までに数カ月から数年にわたることもあります。
以下のような蕁麻疹は、刺激誘発性として考えられており、原因の除去・回避によって症状が改善することがあります。
(1) 食物や薬剤によるアレルギー性の蕁麻疹
(2) 口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome: OAS): 特定の食物摂取後数分〜十数分以内に口腔粘膜を中心に浮腫や違和感を生じる
(3) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis: FDEIA): 特定の食物摂取後2〜3時間以内に運動することでアナフィラキシーや皮膚症状を呈する
(4) 非アレルギー性の蕁麻疹: 造影剤やタケノコなどによる
(5) アスピリン蕁麻疹
(6) 物理性蕁麻疹: 寒冷や温熱、機械的刺激、日光などにより誘発される
(7) コリン性蕁麻疹: 発汗や発汗を促す刺激が加わった際に生じ、かゆみやピリピリした痛みを伴うこともある
蕁麻疹の病型(タイプ)は、多くの場合、皮膚症状の状態や経過によって診断できます。
蕁麻疹の症状は短時間で消失するため、診察時に皮膚症状がみられない方も少なくありません。
そのため、自宅などで症状が出現した際の写真を撮影しておくと、より確実に蕁麻疹の診断を行うことができます。
蕁麻疹の原因として、アレルギーが疑われる場合は、症状に応じて血液検査などのアレルギー検査を行うことがあります。
しかしながら、前述のように病院を受診される方の多くは原因の特定が困難な特発性蕁麻疹であり、これらの検査をすべての患者さんに行うことは推奨されていません。
蕁麻疹の治療の基本は①原因・悪化因子の除去・回避と、②抗ヒスタミン薬を中心とした薬物療法です。
蕁麻疹の原因・悪化に関与する因子として、食物や薬剤の他、感染症、ストレス、物理的刺激、発汗刺激など様々なものが報告されており、原因が明らかな場合はこれらの除去・回避に努めます。
しかしながら原因がはっきりしない場合や、複数の因子が蕁麻疹の発症に関与している場合もあることから、完全な除去・回避が難しいことも少なくなりません。
特に特発性蕁麻疹においては原因や悪化因子の特定が難しく、以下のような薬物療法によって病気の勢いを鎮静化させることが治療の主な目標となります。
一般的に、蕁麻疹の症状を抑制するために外用薬(塗り薬)を用いることは推奨されていませんが、症状出現時のかゆみを軽減させる目的で、いくつかの薬剤が処方されることがあります。
抗ヒスタミン薬の内服、特に非鎮静性(強い眠気や認知機能低下を招かない)である第二世代の抗ヒスタミン薬がほぼすべてのタイプの蕁麻疹に対して基本的な治療となります。
抗ヒスタミン薬の中には市販されているものもありますが、病院ではそれぞれの患者さんに対する治療効果や、好み(内服のタイミングや回数、費用など)を考慮した処方も可能ですので、お困りの際は一度ご相談ください。
第二世代の抗ヒスタミン薬で治療を開始し、効果が乏しい(蕁麻疹の症状が抑制されない)場合は、以下のうちいずれか、もしくは複数の対応をとることがあります。
①他の抗ヒスタミン薬へ治療を変更する
②抗ヒスタミン薬以外の補助薬を追加する
③抗ヒスタミン薬の増量を行う
ただし、薬剤によっては増量ができないものがあることに注意が必要です。
既存の治療で効果が不十分な、特発性の慢性蕁麻疹(特定の誘因がなく、6週間以上持続)に対して、2017年より注射薬であるゾレア®(オマリズマブ)が使用できるようになりました。
ゾレア®は成人または12歳以上の小児に適応があり、蕁麻疹の原因の一つである「IgE(アイジーイー)」という物質の働きをブロックする効果があります。
投与方法は、4週間に1回、300mgを皮下に注射します。
当院でも導入を準備中であり、ゾレアによる治療が可能となりましたらお知らせいたします。