さいたま市浦和区高砂1-16-12【地図へ】
JR浦和駅直結・アトレ浦和West Area4階
TEL: 048-883-4112
梅毒は、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum: TP)と呼ばれる細菌の感染症です。
国内においては近年感染が急増しており、各都道府県で注意喚起もなされている状況です。
主な感染経路は性行為ですが、妊娠中の母親から胎盤を通じて胎児に感染することもあります(先天性梅毒)。
梅毒に感染すると、おおよそ10日〜90日(平均3週間)の潜伏期を経て、外陰部に痛みのないしこり(硬性下疳)が出現し、ときとして浅い潰瘍を形成します。
また、鼠径リンパ節など、感染部位付近のリンパ節に痛みを伴わない腫れがみられることもあります。
第1期の症状はその後自然に消退しますが、感染からおよそ3ヶ月が経過すると、全身の皮膚に赤い斑点(紅斑)やブツブツ(丘疹)が出現します。
一般的に他の細菌・ウイルス感染症では皮疹がみられないような手のひらや足の裏にも症状が出ることが特徴であり、この発疹は「バラ疹」と呼ばれます。
その他、この時期には扁平コンジローマ(外陰部や肛門周囲の平らな隆起)や口腔内の粘膜症状、脱毛などがみられることもあります。
3期梅毒は治療法が確立した現在では少なくなっていますが、無治療の場合はおよそ1/3の方で発症します。
この時期には、梅毒性肉芽腫(ゴム腫)と呼ばれるしこりが皮膚のほか、骨や筋肉に出現します。
3期以降の梅毒では、他の人に感染すること(感染性)はなくなります。
適切な治療が行われないまま10年以上が経過すると、主に中枢神経や血管が侵され、大動脈炎・大動脈瘤や進行性の麻痺を生じます。
梅毒は血液検査で抗体価を測定することで診断が可能です。主に以下の2種類の検査を行います。
梅毒以外でも上昇することがありますが、疾患活動性(病気の勢い)を知ることができる検査です。
検査法は複数ありますが、RPR(Rapid Plasma Reagin)法が一般的であり、検査結果の項目としては「RPR」と表示されます。
感染のごく初期(1〜2週程度)では陰性であることに注意が必要です。
そのため、感染の機会から間もない場合には、再検査を要する場合があります。
梅毒感染時に出現する抗体で、梅毒以外の疾患で上昇することはありません。
疾患活動性は反映せず、梅毒が治癒した後も陽性のまま推移します。
また、STSより遅れて陽性となります。
STSと同様に、複数の検査法があり、FTA-ABS法、TPHA法、TPLA法などが用いられます。
検査結果の項目にもこれらのいずれかが表示されます。
治癒した後も陽性になりますので、STSが陰性、TPが陽性の場合、追加治療の必要はありません。
上記の2種類の検査を組み合わせることで、以下のことがわかります。
STS (RPR) | TP (FTA-ABS/ TPHA/ TPLA) | 解釈 | 注意点 |
陰性 | 陰性 | 梅毒非感染 | 梅毒感染後の ごく初期では STS陰性 この場合 数週間あけて 再検査を 検討する |
陽性 | 陰性 | 梅毒感染 初期 もしくは 生物学的 偽陽性 | 梅毒以外の 疾患でも STS陽性に なりうる (生物学的 偽陽性) |
陽性 | 陽性 | 梅毒感染 もしくは 治療中 | |
陰性 | 陽性 | 梅毒治癒後 もしくは 治療中 | 梅毒治癒後も TPは 陽性のまま |
梅毒は細菌感染症であるため、抗菌薬(抗生物質)を用いた治療を行います。
内服を行う場合はペニシリン系の抗菌薬が第一選択であり、一般的にはサワシリン®(一般名: アモキシシリン)が処方されます。
内服期間は1期であれば2〜4週間、2期であれば4〜8週間程度となります。
また、抗菌薬の血中濃度を高める目的で、ベネシッド®(一般名: プロペネシド)という痛風治療薬を一緒に内服することもあります。
ペニシリン系の抗菌薬にアレルギーのある方では、ミノマイシン®(一般名: ミノサイクリン)など他の系統の抗菌薬を使用します。
2022年に、梅毒に対するペニシリン系抗菌薬の注射薬、ステルイズ®(一般名: ベンジルペニシリンベンザチン水和物)が発売されました。
成人の場合、(1)早期梅毒(1期、2期): 240万単位を1回、(2)後期梅毒(3期、4期): 240万単位を週1回、計3回、筋肉注射で投与します。
ただし、全国的に出荷調整中であり、当院での投与はご希望に添えない場合もございます。
あらかじめご了承ください。
梅毒(特に2期梅毒)の治療開始後、6〜12時間以内に皮膚の赤みや発熱がみられることがあり、これをJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応と呼びます。
梅毒の原因菌であるTreponema pallidumが急激に死滅することにより生じるもので、翌日には症状の改善が認められますので、治療はそのまま継続します。
■治療は医師と相談の上、十分な期間行う必要があります。
■治療開始後も、治癒判定目的に数回の血液検査が必要です。
■医師が安全と判断するまでは、性交渉等の感染拡大につながる行為は控えましょう。
■感染の可能性がある周囲の方(パートナー等)も検査を受け、必要に応じて治療を受けることが重要です。