掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症とは

掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうは、手のひら(手掌)や足の裏(足蹠)に、膿をもった水ぶくれ=膿疱のうほうが出現する疾患です。

通常、膿は細菌感染などで生じることが多いですが、掌蹠膿疱症の場合は膿の中に菌がいない(無菌性膿疱)ことが特徴です。

日本ではおよそ14万人の患者さんがいると推定されており、女性に多くみられること、喫煙者の発症率が高いことが知られています。

掌蹠膿疱症の症状

掌蹠膿疱症では、前述のように手のひら・足の裏に膿疱がみられることが特徴ですが、その前段階としての膿を持たない水ぶくれ(小水疱)や、かさぶた、皮むけ、境界不明瞭な赤みなどがみられることもあります。

一般的に、痒みは膿疱が出現する前に自覚され、多くの場合膿疱自体は痒みを伴いません。

症状の出現部位や程度には個人差があり、手もしくは足だけに症状が出る方や、左右両側ではなく、片側だけに症状が出る方もいらっしゃいます。

また、ときに下記のような症状を伴うこともあります。

①掌蹠外病変: 手のひらや足の裏を越えて、足の甲やひざ、お尻、肘などにかさつき(鱗屑)を伴う赤みや膿疱がみられることがあります。また、爪病変がおよそ3割程度の方でみられます。

②掌蹠膿疱症骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis: PAO): 前胸壁の痛みを特徴とする骨関節症状を伴うことがあります。

掌蹠膿疱症の診断

掌蹠膿疱症は、手のひらや足の裏に無菌性膿疱が慢性的に多発することが特徴ですが、診断のためには、水ぶくれや赤みも含め、他に同様の所見(見た目)を呈する疾患を除外する必要があります。

具体的には、以下の通りです。

疾患名検査法ポイント
足白癬KOH法(顕微鏡)顕微鏡で真菌の存在を確認
膿痂疹細菌培養検査培養検査で細菌の存在を確認
膿疱性乾癬ダーモスコピー(※)
皮膚生検
全身に膿疱や赤みを伴うことが多い
好酸球性膿疱性毛包炎ダーモスコピー
皮膚生検
全身に膿疱を伴うことが多い
病理(皮膚生検)では膿疱内部に好酸球を多数認める
接触皮膚炎問診原因物質が接触した部位に一致して症状が出る
掌蹠膿疱症の主な鑑別疾患

掌蹠膿疱症の治療

①生活習慣の改善

掌蹠膿疱症の約80%で「病巣感染(歯性病巣、病巣扁桃へんとう(※))、喫煙など)」が発症に関与しているとされ、これらの予防としての禁煙、口腔ケア(口の中を清潔に保つ)などの生活習慣の改善が有効と考えられています。

※病巣扁桃: 扁桃そのものは無症状あるいは軽微な症状であるにもかかわらず、それが原因となって皮膚など扁桃から離れた臓器に疾患が引き起こされる状態

②悪化因子の除去

掌蹠膿疱症の方では、以下のような対応により、症状の改善を認めることがあり、治療の1つとして考慮します。

・禁煙

・歯性病巣(歯槽膿漏など)→歯科治療

・病巣扁桃の存在が強く疑われる例→扁桃摘出術

・副鼻腔炎→耳鼻科治療

③局所療法

掌蹠膿疱症の皮膚症状に対しては、ステロイドの外用薬やビタミンD3外用薬、保湿剤、角化治療薬などが用いられます。

また、光線療法(紫外線療法)が保険適応となっており、当院でも積極的に導入を検討しています。

④全身療法

局所療法でコントロールが難しい皮膚症状や、関節症状がある場合には、内服薬や注射薬などの治療を検討します。