単純ヘルペス

単純ヘルペスとは

単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus: HSV)による感染症です。

主に1型(HSV-1)が関与する口唇ヘルペスと、2型(HSV-2)が関与する性器ヘルペスに分かれますが、他の部位(例えば背中やおしりなど)に生じることもあります。

口唇ヘルペス、性器ヘルペスともに、多くの場合は皮膚症状が出現する1〜2日前から痒かゆみやほてり、ピリピリとした痛み、違和感などを生じます。

その後、同じ部位に膨らんだような赤みや、水ぶくれが出現します。

ときには水ぶくれの中に膿をもつこともあります。

これらの症状は、通常はかさぶたを伴って1週間程度で治癒します。

単純ヘルペスの診断は、主に肉眼的な症状(膨らんだような赤みや水ぶくれの存在)や、経過(前駆症状があるか、同じ部位に繰り返しているか)などを参考に行います。

他の疾患との鑑別が難しい場合は、迅速検査のキットを用いて確定診断を行うこともあります。

単純ヘルペスは、抗ウイルス薬の内服薬(飲み薬)や外用薬(塗り薬)を用いて治療します。

治療に用いる主な内服薬を以下に示します。

単純ヘルペスの内服治療

PIT(patient initiated therapy)とは、あらかじめ薬剤を処方しておき、単純ヘルペスの初期症状を自覚した時点で、患者さんの判断で内服を開始する治療法です。

海外ではone-day treatmentやsingle-day treatmentと呼ばれ、以前から単純ヘルペスに対する一般的な治療として認識されていましたが、日本でも2019年よりPITでの治療ができるようになりました。

PITの適応は、同じ病型のヘルペス感染を概ね年3回以上繰り返す方となっています。

また、1回の受診で複数回分の処方をすることはできませんので、処方された薬剤を使用した後は、その都度受診が必要となります。

PITが可能な内服薬を以下に示します。

	アメナリーフ®	ファムビル®
一般名	アメナメビル	ファムシクロビル
用法・用量	初期症状出現後速やかに1200mg(6錠)を服用	初期症状出現後速やかに1000mg(4錠)を服用 1回目の服用から12時間後に1000mg(4錠)を再度服用

単純ヘルペスのPIT

なお、PITの場合、「速やかに」とは一般に症状出現後6時間以内を目標としています。

性器ヘルペスに特徴的な治療法として、概ね年6回以上再発を繰り返す方は、再発を抑える目的で毎日抗ウイルス薬を内服することが可能です。

この場合、使用できる薬剤はバルトレックス®(もしくは同一成分のバラシクロビル顆粒)のみとなっています。

再発抑制療法を行う場合、通常の内服方法は「1回500mg・1日1回内服」ですが、途中で再発を認めた場合には治療量である「1回500mg・1日2回内服」に増量します。

■内服薬もしくは外用薬を、医師の指示通り使用してください。

■内服薬は、5日間は必ず飲み切るようにしましょう。

■患部は石鹸やボディーソープをよく泡立てて優しく洗いましょう(消毒の必要はありません)。

■水ぶくれはむやみに触ったり、潰したりしないようにしてください。

■接触することで他人にうつりますので、皮膚症状が出ている際には注意してください。

単純ヘルペスの感染様式やPITの適応などについては、以下のブログでより詳細に解説しています。

ぜひ併せてお読みください。