円形脱毛症

円形脱毛症の症状

円形脱毛症(英: alopecia areata: AA)とは、突然に境界明瞭な円形の脱毛班を生じる疾患です。

脱毛斑が1つだけの「単発型」や、複数発生する「多発型」のほか、後頭部から側頭部の髪の毛の生え際にかけて不整形の脱毛がみられる「蛇行型」、頭髪がほぼすべて抜けてしまう「全頭型」などのタイプがあります。

また、頭髪だけではなく、眉毛や体毛も抜ける(汎発型)こともあります。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症の原因に関して、はっきりしたことは判明していません。

しかしながら、自己免疫疾患やストレス、遺伝的な背景が関与されているとされています。

また、アトピー性皮膚炎や尋常性白斑、甲状腺疾患などにかかっている方では、通常よりも円形脱毛症の発症率が高いという研究報告もあります。

円形脱毛症の診断

①ダーモスコピー

円形脱毛症の診断は、一般的にダーモスコープという拡大鏡を用いて、脱毛部の毛や毛穴の状態を観察することで行われます。

典型的な円形脱毛症では、以下のような所見が認められます。

切断毛: 短く切れた毛髪

感嘆符毛: 「!」のマーク(感嘆符)のように根元に向かって細くなっている毛髪

黒点: 萎縮した毛髪が毛穴の中で塊になっており、黒い点に見えるもの

この他、病勢(病気の勢い)を確認する目的で、「pull test(牽引試験)」と呼ばれる、脱毛斑周囲の毛髪を引っ張る検査を行うことがあります。

円形脱毛症の急性期では容易に毛が抜けてしまいますが、病気の改善とともに段々と抜ける毛が減ってくるのが確認できます。

②血液検査など

円形脱毛症に特異的な血液検査の項目はありませんが、前述のように甲状腺疾患のほか、SLEなどの膠原病に合併して脱毛がみられることもあるため、初診時に血液検査を行うことがあります。

また、真菌感染症で脱毛を生じていることが疑われる場合には、顕微鏡を用いた真菌検査を行います。

円形脱毛症の治療

円形脱毛症の治療は、主に「脱毛の面積」と「年齢」によって、適応が変わります。

①ステロイド外用薬

年齢制限がなく、円形脱毛症では最初に行う治療法の1つとして考慮します。

1日1〜2回の外用を行いますが、短期的にはざ瘡(ニキビ)や毛包炎の発生、長期的には皮膚萎縮や毛細血管拡張といった副作用に注意が必要であり、定期的な診察を要します。

その他、比較的リスクの低い外用治療としてカルプロニウム塩化物の外用薬があり、ステロイドと併用も可能です。

②ステロイド局所注射

脱毛面積が25%以下の、16歳以上の方では適応を考慮して良い治療法です。

およそ1ヶ月に1回のペースで、脱毛班の周囲にステロイドの局所注射を行います。

外用と同様、皮膚萎縮・陥凹やざ瘡(ニキビ)の発生に注意が必要です。

なお、ステロイド外用や注射に抵抗性で、急激に症状が進行している16歳以上の方では、ステロイドの内服や、入院して点滴を行うこともあります。

③内服薬

比較的使用経験の多い治療薬として、セファランチン®やグリチロン®といった内服薬があり、他の治療と併用可能です。

また、近年では免疫抑制作用を持つJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬のうち、オルミエント®という薬剤が円形脱毛症に対して使用可能となりましたが、投与前に結核のスクリーニング検査や血液検査が必須であること、頭部の50%以上に難治性の脱毛が認められる方にのみ適応であること、15歳以上に使用が限定されることなどに留意する必要があります。

(当院では2023年現在オルミエント®の処方を行っておりません。導入が決まりましたら、お知らせいたします)

④理学療法

上記のような外用薬、内服薬や注射の他、液体窒素による冷却や、光線療法(紫外線療法)を行うことがあります。

いずれも脱毛部にのみ冷却・照射を行い、前者は1〜2週間に1回、後者は1週間に1〜2回(効果が出てきたら間隔を開けることが可能です)の通院で治療するのが一般的です。

⑤局所免疫療法

SADBEやDPCPといった薬液を脱毛部に塗布し、人為的に「かぶれ」を起こすことで発毛を促す治療です。

脱毛面積が頭部の25%以上を占める多発型や全頭型、汎発型の方に良い適応ですが、事前準備として何度か通院が必要であること、実施可能な施設が限られていることに注意が必要です。