日光角化症について【顔の赤いシミには要注意?】

【今回のポイント】

■日光角化症は高齢者の顔面や頭部に生じやすい皮膚がんの一種です

■日光角化症では、がん細胞は表皮に留まっており転移しませんが、放置していると一部は深くまで進展し重症化しうることから、早期発見・治療が重要です

■治療は手術・外用薬(塗り薬)・液体窒素療法が行われ、部位・大きさや全身状態(手術できるか)などによって方針を決定します

目次

はじめに: 日光角化症とは

今回は皮膚がんの一種である日光角化症にっこうかくかしょうについて解説します。

日光角化症は別名を光線角化症ともいい、主に紫外線が原因で生じる皮膚がんの一種です。

特に長期間紫外線にさらされた皮膚にできやすいことから、高齢者の顔面や頭部によく生じます。

リンパ節転移や遠隔転移をおこす他の一般的な皮膚がんと異なり、日光角化症の場合、がん細胞は皮膚の表層(表皮)に留まっているため、転移を生じることはありません。

ただし、放置していると日光角化症の一部ではがん細胞が表皮よりも深くまで進展し、最終的には転移し重症化しうることから、早期発見・治療が重要です。

余談ですが、日光角化症は「顔の赤いシミ」として10年ほど前に某有名情報番組で紹介されたことがあります。

その翌日には病院の皮膚科外来に「昨日テレビをみて自分も日光角化症ではないか気になった」という方々が多く受診され、テレビの影響力の大きさを実感しました。

日光角化症の診断

日光角化症の見た目は単なる紅斑(赤み)の場合もあれば、表面にかさつきを伴ったり、隆起していたり、分厚いかさぶたを付けるものまでバリエーションに富むため、「この見た目なら確実に日光角化症」ということは困難です。

ダーモスコピーという拡大鏡を用いた検査では、「ストロベリーパターン(strawberry pattern)」と呼ばれる、赤みの中に拡大した毛穴が白くみえる(赤い部分をイチゴの実に、白い部分を種に例えています)特徴がみられることもありますが、最終的な確定診断は皮膚生検による組織検査で行います。

組織検査では、悪性のがん細胞が表皮の中に存在している像が確認できます。

日光角化症の治療①手術

日光角化症の治療は、大きく①手術、②外用薬(塗り薬)、③液体窒素療法の3つにわけられます。

手術を行う場合、顔面や頭部、手背(手の甲)などの小さな腫瘍であれば、局所麻酔で切除し、縫合(縫い寄せる)することができ、ほとんどの場合は日帰りでも治療可能です。

ただし、腫瘍の大きさや部位によっては切除した後の傷を単純に縫い寄せるのが難しいことがあり、体の他の部位からの植皮や、皮弁形成(余っている近くの皮膚を持ち上げて引っ張ってくる)など大掛かりな手術が必要になります。

そのような手術では基本的に入院が必要になるほか、出血や感染のリスクも増加するため注意が必要です。

一方、手術で治療する最大のメリットとして、切除した腫瘍の組織検査を行うことで取り残しがないか、表皮よりも深いところまでがん細胞が進展していないかなど、病気の状態を知ることができる点が挙げられます。

日光角化症の治療②外用薬(塗り薬)

顔面や頭部に生じた日光角化症に対して、ベセルナ®(一般名: イミキモド)クリームという外用薬が2011年から使用できるようになりました。

ベセルナ®クリームには皮膚の中にいる免疫関連細胞を刺激し、炎症を起こすことで、がん細胞を死滅させる働きがあります。

使用方法は以下のようになっています。

治療部位に適量を1日1回、週3回、就寝前に塗布する。塗布後はそのままの状態を保ち、起床後に塗布した薬剤を石鹸を用い、水又は温水で洗い流す。4週間塗布後、4週間休薬し、病変が消失した場合は終了とし、効果不十分の場合はさらに4週間塗布する。

持田製薬「ベセルナクリーム5%」添付文書より

なお、ベセルナ®クリームによって炎症が生じるため、使用中は薬剤を塗った部位の赤みやただれ、痛みの出現に注意する必要があります。

元々そのような作用がある薬なので軽度であれば問題はないのですが、上記のような症状が強く出てしまったときは、使用の中止・中断も含めて主治医に相談しましょう。

また、手術とは異なり、病変の消失は肉眼的に判断するか、判断が難しい場合は再度組織検査で確認を行います。

日光角化症の治療③液体窒素療法

日光角化症に対する治療として、液体窒素療法を行うこともあります。

低温の窒素をスプレーで照射したり、綿棒で皮膚に直接当てることによってがん細胞を凍結・破壊する治療です。

1回の治療は数十秒で終了しますが、複数回の通院を要し(必要な回数・期間には個人差があります)、効果が乏しい場合は他の治療法への切り替えを検討する場合もあります。

まとめ

日光角化症の主な治療法について表にまとめました。

スクロールできます
手術外用薬
(ベセルナ®クリーム)
液体窒素療法
メリット①小さいものであれば
1回で治療が終了
自宅で
治療可能
1回の治療は
短時間で終了
メリット②組織検査で
がんが取り切れているか
確認可能
手術が難しい方でも
使用できる
手術が難しい方でも
治療可能
デメリット①大きさ・部位によっては
入院が必要
赤みやびらん
痛みなどが
生じること
あり
複数回の通院が必要
デメリット②術後出血・
感染などの
リスクあり
確定診断や
確実な治癒判定には
組織検査を
要する
確定診断や
確実な治癒判定には
組織検査を
要する
各治療法の比較

日光角化症については以上です。

当院の院長は大学病院で悪性腫瘍の専門外来を担当していたことから、クリニックにおいても日光角化症の早期発見・治療に努めてまいります。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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