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【今回のポイント】
■ニキビは毛穴でアクネ菌が増殖し炎症を生じる疾患です
■最近では新しい治療薬が発売されており、角化を調節する、ピーリング効果を有するなど、それぞれ異なる特徴を有しています
■これらの薬剤を適切に組み合わせることで様々なタイプのニキビに効果が期待できますが、刺激を生じやすいもの、妊婦・授乳している方では使えないものもあり注意が必要です
ニキビ(尋常性ざ瘡)は毛穴でアクネ菌が繁殖し炎症を生じる疾患です。
アクネ菌は正式名称をCutibacterium acnes/キューティバクテリウム・アクネスといい(以前はPropionibacterium acnesという名前でしたが、最近呼び方が変わりました)、普段からほとんどの人の皮膚や毛穴に生息している皮膚常在菌です。
生息しているだけではトラブルにはならないのですが、毛穴の「詰まり」(面皰)がきっかけとなり、皮脂が毛穴に溜まることで、アクネ菌が過剰に増殖します。
毛穴は全身に分布していますが、思春期のニキビは特に皮脂の分泌が多い顔面や胸、背中によく発生します。
毛穴が詰まっている状態を俗に「白ニキビ」と呼びますが、ニキビがさらに進行すると、増殖したアクネ菌が産生する酵素リパーゼにより炎症が起き、痛み、腫れや膿を伴ういわゆる「赤ニキビ」となります。
従来のニキビの治療はアクネ菌を抑える抗菌薬の外用が中心でしたが、①毛穴の詰まりが制御できず、白ニキビが改善しないためニキビが再度悪化しやすいこと、また②長期間連続で使用することで、耐性菌(抗菌薬の効かないアクネ菌)が出現するリスクがあること、の2点が大きな問題でした。
しかしながら、最近ではニキビ専用の新しい薬剤が次々と発売され、上記の問題にも対応できるようになってきています。
ここからは、それらの薬剤について詳しく見ていきましょう。
ディフェリン®ゲルの成分はアダパレンという、レチノイド(ビタミンA誘導体)様作用をもつ物質です。
レチノイドには角質剥離作用や皮脂分泌抑制作用などがあり、その外用薬は「トレチノイン」として美容皮膚科で使用されることがあります。
ディフェリン®ゲルはレチノイドと全く同じ効果を示すわけではありませんが、皮膚の角化を調節し毛穴の詰まりを改善・予防する効果があります。
すなわち「白ニキビ」に対する高い効果が期待でき、結果として「赤ニキビ」も徐々に減少させることができます。
使用方法は1日1回、洗顔後に患部に適量を塗布します。
顔面以外のニキビには適応がありません。
使用を開始して数日〜2週間以内に塗布した部位に赤みやひりつき、皮むけが生じることがあり、徐々に軽減されるものの、中には刺激が続くことで継続使用が難しいケースもありますので、強い赤みやひりつき、ジュクジュクした腫れが出てきたときには使用を中止し、皮膚科医に相談するようにしましょう。
その他の注意点として、妊婦や妊娠の可能性がある女性に対しては禁忌となっています。
べピオ®ゲル、ローションの成分は過酸化ベンゾイルという物質です。
過酸化ベンゾイルは分解されると活性酸素(フリーラジカル)を産生し、アクネ菌に対する抗菌作用を示すほか、角質剥離(ピーリング)作用を有しており、「白ニキビ」「赤ニキビ」ともに有効です。
使用方法は1日1回、洗顔後に患部に適量を塗布します。
ディフェリン®ゲルと比較すると胸や背中のニキビにも使用可能な点で優れていますが、赤みやひりつき、かぶれを生じることがありますので、最初は狭い範囲から外用をはじめ、慣れてきたら徐々に塗る範囲を広げていくようにするのがオススメです。
また、漂白作用があることから、髪の毛や衣類に付着しないように注意します。
添付文書には「25℃以下で保存」と記載があり、薬局やクリニックから冷蔵庫での保管を指示されることも多いようです。
2022年12月に今までのゲルに加えてローションタイプの製剤が発売され、治療の選択肢が広がりました。
エピデュオ®ゲルはディフェリン®とべピオ®の2つ(DUO)の成分(エピデュオ®の名前の由来にもなっています)が配合された薬剤です。
2つの有効成分により、「白ニキビ」「赤ニキビ」の両者に対して高い効果が期待できる反面、赤みやひりつき、皮むけ、かぶれといった副作用が出現することがあります。
多くの場合これらの副作用は徐々に軽減していきますが、強い赤みやひりつき、ジュクジュクとした腫れが出てきたときは、使用を中止し皮膚科医に相談しましょう。
使用方法は1日1回、洗顔後に患部に適量を塗布します。
ディフェリン®の成分が入っているため、妊婦あるいは妊娠の可能性がある女性には禁忌です。
また、ディフェリン®と同様、顔面のニキビに適応となります。
べピオ®の成分が入っているため、漂白作用があり、髪の毛や衣類に付着しないように注意します。
デュアック®配合ゲルはその名の通り、べピオ®ゲルと抗生物質のクリンダマイシンの2つの成分が配合された薬剤です。
抗生物質が入っているため、「白ニキビ」に加えて、特に「赤ニキビ」に対して高い効果が期待できます。
使用方法は1日1回、洗顔後に患部に適量を塗布します。
添付文書上は2〜8℃で保存することとされていますが、3ヶ月程度であれば室温(25℃)で変化はみられないようです。
べピオ®の成分が入っており、漂白作用と赤みやひりつき、かぶれの出現に注意が必要です。
また、漫然と使用するとアクネ菌が耐性を獲得するリスクがあり、日本皮膚科学会の治療ガイドラインでも炎症が軽快した後は中止することが推奨されています。
CLDM1%/BPO3% の長期維持療法は、現在のところエビデンスはなく、CLDM外用の長期連用によってP. acnes が抗菌剤耐性を獲得する可能性があるため、推奨しない。
日本皮膚科学会 尋常性痤瘡ガイドライン2017: https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/acne_guideline2017.pdf
(※CLDM1%/BPO3%: デュアック®配合ゲルの成分名です)
ここまで紹介した4種類の薬剤について、表にまとめました。
薬剤名 | 特徴 | 注意点 | その他 |
---|---|---|---|
ディフェリン® | 皮膚の角化を調節 | 赤み ひりつき 顔面に適応 妊婦は禁忌 | |
べピオ® | アクネ菌に対する抗菌作用 +ピーリング効果 | 漂白作用 赤み ひりつき かぶれるリスク | 25℃以下で保存 |
エピデュオ® | ディフェリン®+べピオ® 高い効果が期待できる | 赤み ひりつき かぶれるリスク 漂白作用 顔面に適応 妊婦は禁忌 | |
デュアック® | べピオ®+クリンダマイシン 高い効果が期待できる | 漂白作用 赤み ひりつき かぶれるリスク 長期連用非推奨 | 3〜8℃で保存 |
当院では大学病院の他、都内を中心とした皮膚科・美容皮膚科での長年の治療経験を活かし、ニキビの部位・重症度に応じた適切な外用治療を行うことに努めます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。