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鼻水、目のかゆみ、くしゃみ…この時期、スギ花粉による花粉症に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
スギ花粉の飛散量は花粉を飛散させる雄花の芽の数に比例しますが、環境省の発表によれば、東京や神奈川、京都、広島、福岡など12の都府県では雌花の芽の数が過去10年間で最も多く、花粉の飛散量が非常に多くなると予想されています。
実際に、医療機関を受診される患者さんの数も、今週に入りぐっと増えてきました。
そこで今回は、花粉症に対して処方されることの多い薬剤を、①内服薬(抗ヒスタミン薬)、②点眼薬、③点鼻薬の3つにわけて、前半は内服薬、後半は点眼・点鼻薬について紹介していきます。
花粉症が発症するメカニズムは、以下のようになっています。
①花粉が体内に入り、排除すべき異物と認識されると、リンパ球が花粉に反応する抗体(IgE抗体)を産生する
②IgE抗体がマスト細胞の表面に結合する
③花粉が再度体内に入ると、マスト細胞上のIgE抗体と反応し、マスト細胞からヒスタミンやロイコトリエンといった化学物質が放出される
④これらの化学物質の働きにより、鼻水やくしゃみといった、異物を排除するための症状がみられる(=花粉症)
このため、花粉症の症状を和らげるためには、ヒスタミンの働きをブロックする抗ヒスタミン薬の内服薬(飲み薬)が有効です。
ここでは、代表的な薬剤として、OTC(over the counter: 医師の処方箋がなくても薬局などで購入可能)医薬品の中から「アレグラ®」「クラリチン®」「アレジオン®」と、処方箋が必要な薬剤の中から近年発売された「ビラノア®」「デザレックス®」「ルパフィン®」について解説します。
アレグラ®(一般名: フェキソフェナジン塩酸塩)は2000年に発売された抗ヒスタミン薬で、錠剤とドライシロップの2種類があり、成人の他、生後6か月のお子さんから使用できます(ただし7歳未満の小児ではドライシロップのみ適応)。
大きな特徴として眠気が少ないことが挙げられ、後述のクラリチン®やビラノア®と同様、添付文書に運転に関する制限の記載がない薬剤となっています。
ただし、アレグラ®で眠気を催す方もいらっしゃいますので、異常を感じた場合は内服を中止し、かかりつけ医に相談しましょう。
アレグラ®はOTC薬としても販売されているため、処方箋がなくても、薬局等で購入が可能です。
用法・用量を以下に示します。
アレグラ®錠 30mg/60mg アレグラ®OD錠 60mg | アレグラ® ドライシロップ | |
成人 | 1回60mg 1日2回 | 1回60mg (ドライシロップとして1.2g) 1日2回 |
7歳以上 | 7歳以上12歳未満: 1回30mg 1日2回 12歳以上: 1回60mg 1日2回 | 7歳以上12歳未満: 1回30mg (ドライシロップとして0.6g) 1日2回 12歳以上: 1回60mg (ドライシロップとして1.2g) 1日2回 |
6か月以上 7歳未満 | 適応なし | 6ヵ月以上2歳未満: 1回15mg (ドライシロップとして0.3g) 1日2回 2歳以上7歳未満: 1回30mg (ドライシロップとして0.6g) 1日2回 |
クラリチン®(一般名: ロラタジン)は2002年に発売され、アレグラ®などと並び世界でもっとも多く使用されている抗ヒスタミン薬の1つです。
錠剤とドライシロップの2種類があり、ドライシロップは3歳から、錠剤は7歳以上の小児と成人で使用可能です。
また、アレグラ®と同様、添付文書に運転の制限に関する記載がなく、OTC薬としても購入することができます。
用法・用量を以下に示します。
クラリチン®錠 10mg クラリチン®レディタブ錠 10mg | クラリチン® ドライシロップ | |
成人 | 1回10mg 1日1回、食後 | 1回10mg (ドライシロップとして1g) 1日1回、食後 |
小児 | 7歳以上: 1回10mg 1日1回、食後 | 3歳以上7歳未満: 1回5mg (ドライシロップとして0.5g) 1日1回、食後 7歳以上: 1回10mg (ドライシロップとして1g) 1日1回、食後 |
アレジオン®(一般名: エピナスチン塩酸塩)は、今回紹介している抗ヒスタミン薬の中では最も古く、1994年に発売されました。
アレグラ®、クラリチン®と異なり、「眠気を催すことがあり、内服中は自動車の運転等に注意が必要」な旨、添付文書に記載されています。
また、小児には適応がありません。
OTC薬については、当初は10mg錠のみの販売でしたが、現在は20mg錠も購入できるようになっています。
花粉症をはじめとする、アレルギー性鼻炎に対する用法・用量を以下に示します。
アレジオン®錠 10mg/20mg | |
成人 | 1回10~20mg 1日1回 |
ビラノア®(一般名: ビラスチン)は2016年に発売となった薬剤で、その後2021年にはOD錠も追加となりました。
1日1回の内服はクラリチン®やアレジオン®と同じですが、「空腹時投与」と指定されていることが特徴です。
これは、ビラノア®の血中濃度が食事により影響を受けるためです。
「空腹時」とは一般的に「食後2時間以上、かつ次の食事の1時間以上前」と考えられ、具体的には以下のようなタイミングを指します。
・起床時: ただし起床後1時間以内に朝食を摂る場合は不適
・午前中: 朝食後2時間以上経ってから
・午後〜夕方: 昼食後2時間以上経ってから
・就寝前: 夕食後2時間以上経ってから、特に寝るまでの時間を空ける必要はありません
上記のように内服のタイミングには注意が必要ですが、添付文書には運転に関する記載がなく、眠気が少ない薬剤といえます。
小児には適応がありません。
用法・用量を以下に示します。
ビラノア®錠 20mg ビラノア®OD錠 20mg | |
成人 | 1回20mg 1日1回 空腹時 |
デザレックス®(一般名: デスロラタジン)は2016年に発売された抗ヒスタミン薬です。
クラリチン®(一般名: ロラタジン)の代謝産物であり、クラリチン®と比較すると他の薬剤との相互作用や内服する方の肝機能の影響を受けにくいと考えられています。
1日1回タイミングを選ばず内服が可能なこと、運転に関して注意の記載がないことが良い特徴といえます。
12歳以上の小児および成人に適応があります。
用法・用量を以下に示します。
デザレックス®錠 5mg | |
成人 | 1回5mg 1日1回 |
小児 | 12歳以上: 1回5mg 1日1回 |
ルパフィン®(一般名: ルパタジン)は今回紹介している抗ヒスタミン薬の中ではもっとも新しく、2017年に発売された薬剤です。
ヒスタミンに加えて、PAF(platelet activating factor: 血小板活性化因子)と呼ばれる、血管拡張や知覚神経刺激に関わる化学物質もブロックする働きを有しており、アレルギー症状に対して強い効果を発揮することが期待できます。
一方で、眠気を催すことがあり、自動車の運転は控える旨、添付文書に記載があることに注意が必要です。
デザレックス®同様、12歳以上の小児と成人で内服可能です。
用法・用量を以下に示します。
ルパフィン®錠 10mg | |
成人 | 1回10mg 1日1回 |
小児 | 12歳以上: 1回10mg 1日1回 |
いかがでしたでしょうか。
抗ヒスタミン薬には今回紹介したもの以外にも多くの種類があり、適応となる年齢や運転に関する注意の有無などに違いがあります。
当院では患者さん1人1人のライフスタイルに合った薬剤の選択を行い、辛い症状を和らげるお手伝いができればと考えております。
次回は点眼薬・点鼻薬について解説します。
ここまでお読みいただきありがとうございました。