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皮膚生検とは、皮膚組織の一部をメスなどで採取する行為のことですが、その主な目的は採取した組織の病理診断(顕微鏡を用いて、細胞レベルで観察を行い、皮膚疾患の確定診断につなげる)であるため、組織採取から病理診断までの一連の流れを指して「皮膚生検」と称する場合もあります。
皮膚科医であれば専門研修の初期に学ぶ、正に「基本のキ」ですが、クリニックや病院を受診した際に、担当医から「皮膚生検を行いましょう」「組織検査をしましょう」と言われ、「皮膚生検って何をするの?どんな目的で行うの?」と疑問に思う方もいらっしゃることでしょう。
今回は皮膚生検について、その目的や検査の流れを詳しく解説します。
皮膚生検の目的は、前述のように採取した組織を詳細に観察し、確定診断を下すことにありますが、そもそも確定診断が必要なときというのは以下のようなケースが考えられます。
例えば脂漏性角化症という、顔面に多く生じる小さなイボがあります。
通常、ダーモスコピーという拡大鏡を用いて観察することで診断は容易ですが、1つ1つのイボの大きさが小さいと、扁平疣贅(ウイルス性イボの一種)や脂腺増殖症(皮脂腺の増殖による膨らみ)といった、他の疾患と区別がつきにくい場合があります。
それぞれの疾患は適応となる治療が異なるため、このような場合には適切な治療法を選択する目的で皮膚生検による確定診断を考慮します。
患者さんからよく相談される事柄の1つに、「自分のほくろが悪性でないかどうか見てほしい」というものがあります。
ダーモスコピーによる観察で診断がつくことが多い一方で、数ある皮膚疾患の中には「良性に見えるが急激に大きくなってきている(=経過からは悪性も疑われる)」「見た目だけでは良性とも悪性とも判断しかねる」といった例もあるため、このような場合には「良性か悪性か、白黒はっきりつける」という意味合いで皮膚生検を検討します。
また、一般に、良性と思われる疾患でも、手術で摘出した際には、万が一悪性化していないか(術前診断が正しいか)確認する目的で病理診断を行います。
例えば、高齢者の外陰部に生じることが多い乳房外パジェット病という悪性腫瘍では、腫瘍と正常な皮膚の境界がはっきりせず、ともすると明らかな皮膚の変化が見られるすぐ外側の、一見正常に見える部位にも、腫瘍細胞が隠れていることがあります。
このような場合、腫瘍と正常な皮膚の境界を確定させるために、腫瘍の辺縁付近を数箇所生検し、思わぬところまで腫瘍が広がっていないか確認してから、手術に臨むことになります(この検査を特に「マッピング生検」と呼びます)。
同様に、皮膚表面からの深さも、特に悪性腫瘍では治療法の選択に重要な情報となりますので、「横の広がり」に加えて、「縦の広がり」も、皮膚生検で確認します。
日光角化症と呼ばれる皮膚の悪性腫瘍は、多くの場合露光部(顔面や上肢など)に生じた「赤み」として認識されます。
診断がついた後、外用薬などによる治療を行いますが、その後も治療の影響で「赤み」が残る場合があります。
このように、見た目だけで「治ったか、治っていないのか」はっきりしない場合は、皮膚生検で治療の効果を確認することも検討されます(特に悪性腫瘍の場合は、「治療した部位に時を経て変化があったとき、それが再発なのか別の疾患なのか」という観点で検査することもあります)。
皮膚生検には大きく分けて以下の3つの方法があります。
皮膚生検に特化した円形のメスを用いて、組織をくり抜くように採取します。
メスの大きさは施設や対象となる疾患によっても異なりますが、一般に直径2mm〜5mm程度のものを用います。
傷が小さくて済むメリットはありますが、採取できる深さには限りがあるため、皮膚の深部に重要な情報が隠れていると考えられる場合には、以下の部分生検や全切除生検を検討します。
手術に用いるメスを使用して、組織の一部を紡錘形(真ん中が太く、両端の幅が狭くなっている形)に切り取ります。
ある程度の深さまで切り取れるためパンチ生検と比較して情報量が多くなるというメリットがある一方、切除した後には糸を用いた縫合が必要となります。
また、一般に傷の長さはパンチ生検よりも長くなります。
部分切除と同様のメスを用いて、病変をすべて切除する方法です。
小さな発疹や腫瘍を検査する際に用いることがあります。
傷は長くなる一方で、検査結果によっては追加の治療が不要となる(切除が治療を兼ねる)というメリットがあります。
上記のうち、どのような方法がもっとも望ましいかは、検査する部位や、対象となる疾患で異なります。
当然、傷が小さい方が患者さんの負担は軽くなると考えられますが、小さな検体(採取した組織)は情報量も少なくなりがちですので、「検査はしたが、結果的に得られるものは少なかった」ということのないように、検査方法については担当医とよく相談しましょう。
次に、皮膚生検の流れについて、パンチ生検を例に解説します。
診断をつけるために適切な検査部位を決定します。
特に病変が複数ある場合、どの部位から採取すると目的とする情報(=確定診断)が得られやすいか、慎重に検討します。
皮膚をメスで切る際の痛みを軽減・消失させる目的で周囲の皮膚に麻酔を行います。
この際に使用する麻酔薬の種類も、部位やアレルギーの有無によって適切に選択します。
麻酔が効いていることを確認して、メスで組織を採取します。
この際も、目的とする深さまで皮膚が切り取れているかどうか確認を行います。
特殊な検査を行う場合を除き、採取した組織はすみやかにホルマリン液に投入します。
このようにすることで、組織の状態が良好に保たれ(固定)、病理診断に役立ちます。
(写真はイメージです/右側の助手が持っているのが、ホルマリン液です)
組織を採取した部位は傷になっていますので、出血が続いていないか確認を行います。
小さな傷であれば数分の圧迫で止血が可能ですが、血液をサラサラにする薬剤(抗凝固薬、抗血小板薬)を内服中の方や、顔面・頭部など血流豊富な部位では圧迫のみで止血が困難な場合があり、そのような際には糸を用いて縫合を行います。
最後に、生検後の傷に軟膏を塗り、ガーゼ等で保護して終了となります。
■生検後の傷の処置方法に関しては、医師や看護師からの説明に従ってください。
■生検当日はシャワーや入浴、飲酒、激しい運動は控えるようにしてください。
■翌日以降は、基本的にシャワーは可能です。石鹸やボディソープで傷を洗浄し、清潔を保つようにしましょう。
■縫合した場合は、後日抜糸が必要となりますので、指示された期間内に再診してください。