【治療法は?小児でもできる?】スギ・ダニの舌下免疫療法について【皮膚科専門医が解説】

目次

はじめに: 舌下免疫療法とは

近年、アレルギー性鼻炎の治療法として注目されている舌下免疫療法をご存知でしょうか。

従来の抗アレルギー薬による治療(対症療法)とは異なり、アレルギー症状の根本的な改善を図ることが期待できる治療法です。

今回はこの舌下免疫療法について、適応や治療期間、注意すべき副作用などを併せて解説します。

アレルギー性鼻炎について

アレルギー性鼻炎とは、花粉やダニ、ハウスダストなどの原因物質(アレルゲン)が体内に取り込まれた際に免疫機能が過剰に反応し、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどが出現する疾患です。

季節によって症状が出るもの(いわゆる「花粉症」)を季節性アレルギー性鼻炎、ダニやペットの毛など、季節を問わず症状が出るものを通年性アレルギー性鼻炎と、分けて呼ぶこともあります。

【季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の主な原因】

スギやヒノキ、カモガヤ、オオアワガエリ、ブタクサなど

【通年性アレルギー性鼻炎の主な原因】

ダニ、真菌(カビ)、昆虫、ペットの毛など

舌下免疫療法の理論と適応

舌下免疫療法は、毎日少量のアレルゲンを内服薬として体内に取り込むことで、体をその物質に慣れさせ、過剰な免疫反応を抑える治療です。

アレルゲンを含んだ薬剤を内服すると、有効成分が口の粘膜に存在する免疫関連細胞に捉えられ、顎の下のリンパ節まで運ばれます。

この刺激によって、リンパ節において過剰な免疫を抑えるリンパ球が産生され、結果としてアレルギー性鼻炎の症状改善が期待できます。

舌下免疫療法の適応は、現時点ではスギ花粉と、ダニに対するアレルギーをお持ちの方となっています。

これら以外の物質によってアレルギー性鼻炎が生じている方に関しては効果が認められていないため、使用することができません。

舌下免疫療法に使用する薬剤

①シダキュア®

シダキュア®は、スギ花粉症に対する舌下免疫療法で用いる薬剤です。

投与前には、スギ花粉に対するアレルギーがあることを血液検査で確認する必要があります。

また、以下の方では使用することができません。

【禁忌】

本剤の投与によりショックを起こしたことのある方

重症の気管支喘息をお持ちの方(本剤の投与により喘息発作を誘発するおそれがあります)

シダキュア®の内服方法は、最初の1週間は2,000JAU錠を1日1回1錠、2週目以降は、5,000JAU錠を1日1回1錠、舌の下に1分間保持した後、飲み込みます。

その後5分間はうがいや飲食を控えてください。

②ミティキュア®

ミティキュア®は、ダニアレルギーに対する舌下免疫療法で用いる薬剤です。

投与前には、ダニに対するアレルギーがあることを血液検査で確認する必要があります。

また、以下の方では使用することができません。

【禁忌】

本剤の投与によりショックを起こしたことのある方

重症の気管支喘息をお持ちの方(本剤の投与により喘息発作を誘発するおそれがあります)

ミティキュア®の内服方法は、最初の1週間は3,300JAU錠を1日1回1錠、2週目以降は、10,000JAU錠を1日1回1錠、舌の下に1分間保持した後、飲み込みます。

その後5分間はうがいや飲食を控えてください。

舌下免疫療法を開始する時期は?

シダキュア®は、スギ花粉の飛散シーズン(2〜5月)には内服を開始することができず、一般的には6月〜11月の間に開始する薬剤となっています。

内服開始後は、シーズン中もそのまま内服の継続が可能です。

ミティキュア®は、時期を問わず内服を開始できます。

舌下免疫療法は小児でも行える?

舌下免疫療法は、シダキュア®、ミティキュア®ともに5歳以上の小児で内服可能です。

ただし、「舌の下に薬剤を1分間保持する」ということを理解し、実施可能な方に限られます。

また、成人と同様、投与前には血液検査でスギ花粉あるいはダニに対するアレルギーをお持ちであることを確認する必要があります。

当院では現在、15歳未満のお子様に対する血液検査を実施しておりません。
当院での治療開始・継続希望の際は過去1年以内に実施された他院でのアレルギー検査結果のご持参をお願いしておりますので何卒ご了承ください。

舌下療法開始時の注意点

舌下免疫療法の初回内服時は、重篤な副作用の出現に注意し、30分間安静の状態で経過観察を行う必要がありますので、院内で待機していただきます。

そのため、初回の内服を行う日は時間に余裕をもってご来院ください。

特に問題がなければ、そのまま帰宅が可能です。

2回目以降は、ご自宅で内服を継続します。

舌下免疫療法はどのくらいの期間継続する?

舌下免疫療法は、内服を長期的に継続することでスギ花粉やダニに対する免疫反応を抑えることが目的であり、少なくとも3〜5年は内服の継続が必要です。

治療の効果が現れるまでの期間や、症状の改善度は人によって異なりますので、治療の中断・終了については医師とよく相談しましょう。

舌下免疫療法の副作用

舌下免疫療法の主な副作用には以下のようなものがあります。

■口の中の腫れ、かゆみ、不快感

■喉の違和感、刺激感

■耳のかゆみ

治療中の注意点

■服用前、および服用後の2時間は激しい運動、アルコール摂取、入浴を避けてください。

■誤って多く服用した際は、直ちに薬剤を吐き出し、うがいをしてください。

翌日、あらためて前日の用量を服用してください。

■誤って1分間の舌下保持を行わず飲み込んだときは、再度服用せず、翌日、あらためて前日の用量を服用してください。

■服用し忘れた際には、同日中であればその日の用量を服用し、前日の服用を忘れた際には、2日分服用せず前日の容量のみを服用してください。

■服用したかどうか不確かな場合、その日の服用はしないでください。

最後に

舌下免疫療法の適応や治療期間、副作用について解説しました。

シダキュア®、ミティキュア®ともに、当院でご相談可能です。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

2024/09/06追記:シダキュア®については、全国的な在庫不足により新規処方が困難な状況が続いております。状況が改善しましたら再度お知らせいたします。

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